真無盲腸目

真無盲腸目について

真無盲腸目（しんむもうちょうもく、Eulipotyphla）は、動物の哺乳綱に位置づけられる目で、特に特徴的な生態と形態を持つ一群です。このグループは、脳が小さく、ほとんどの種が蹠行性（足裏で歩行すること）である点が挙げられます。また、五本の指を持つことが特徴であり、鳴管（鼓胞）が骨に変わらない等、現生哺乳類の中でも非常に原始的な形質を示しています。

分類の歴史

真無盲腸目の分類は、かつて食虫目（Insectivora）としてまとめられていましたが、分子系統解析の進展により、テンレック科やキンモグラ科は異なる系統に属することが判明しました。この結果、1997年に真無盲腸類という新たな分類群が提案されました。

真無盲腸類は、食肉目や翼手目、鱗甲目などと共にローラシア獣類を形成し、これらの共通祖先から最も早く分岐したとされています。アフリカトガリネズミ目は、他のアフリカ系の動物群と近縁であることが示唆されています。

系統解析の進展

真無盲腸類の系統やその進化の過程については、多くの異なる仮説が存在しています。例えば、従来はハリネズミ科が早期に分岐したと考えられており、これに基づいてハリネズミ形類（Erinaceomorpha）とトガリネズミ形類（Soricomorpha）に分ける見解もありました。とはいえ、Buckley et al. (2019)の研究では、コラーゲンを使用した分子解析によりソレノドン科、ネソフォンテス科、トガリネズミ科が単系統群として形成されることが明らかにされたものの、データの不足やアミノ酸配列の欠落が影響している可能性もあるとされています。

一方、核遺伝子やミトコンドリアDNAを用いた他の研究では、トガリネズミ科とハリネズミ科が一緒の系統を形作れる結果が得られており、系統の理解が複雑になっています。また、Brace et al. (2016)では7280万年前にソレノドン科とネソフォンテス科がモグラ科やトガリネズミ科、ハリネズミ科から分岐したことを示す解析結果があり、この知見から新しい分類群であるSolenodonotaが提唱され、Erinaceotaが姉妹群として位置づけられています。

さらに、Sato et al. (2019)の研究では、現在の種の分岐年代を推定し、モグラ科は6320万年前、ソレノドン科は6160万年前、トガリネズミ科とハリネズミ科は5780万年前に分岐したとされています。このことは、K-Pg境界以降に急激な多様化が起きたことを示唆しています。

真無盲腸目の分類

真無盲腸目に属する主要な科は以下の通りです。これらの分類はBurgin et al. (2018) に基づいています。

• - ハリネズミ科 (Erinaceidae)
• - ネソフォンテス科（絶滅種、Nesophontidae†）
• - ソレノドン科 (Solenodontidae)
• - トガリネズミ科 (Soricidae)
• - モグラ科 (Talpidae)

これらの科は、真無盲腸目の多様性と進化の歴史を理解する上で重要な役割を果たしています。このように、真無盲腸目は現生哺乳類の中でも特に興味深い一群であり、今後の研究によってそのさらなる解明が期待されています。

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