トガン (鎮南王)

トガンの生涯と業績

トガン（モンゴル語: ᠲᠣᠭᠣᠨ、ラテン文字転写: Toγan、キリル文字: Тогоон、約1265年 - 1301年）は、元（モンゴル帝国）の皇族であり、第5代皇帝クビライ・カアンの庶子です。その生い立ちや治世は、モンゴル帝国の歴史において重要な役割を果たしました。

生誕と背景

トガンは、バヤウト部族の女子ブラクジンの娘であるバヤウジンを母に持ち、クビライにとっては11番目の息子として生まれました。彼の家系は複雑で、同名の側室も存在し、同一人物ではないかと推測されていますが、詳細は不明です。

鎮南王としての任命

1284年6月、トガンは父クビライから鎮南王に任ぜられました。この地位は、元朝の制度の中では高位に位置し、彼に寄せられた期待の大きさを示しています。同年7月には、チャンパ王国を征服するよう命じられ、これは彼の南方征服への意欲を裏付けるものでした。

戦争と失敗

同年末にトガンは安南に進出し、そこから大越への侵攻を開始しますが、苦戦が続きます。特に至元25年（1288年）の白藤江の戦いでは、大越側の将軍、陳国峻の巧妙な策略によって元軍は惨敗しました。この敗北は、トガンと彼の軍にとって避けがたい痛手でした。

後の運命

至元28年（1291年）には、再び軍を率いて揚州に出鎮することとなるも、安南での敗戦を受けて父クビライからの信任を失います。クビライは生涯にわたり、トガンとの謁見を許可しなかったといいます。これ以降のトガンに関する記録はほとんどありませんが、彼はクビライの死後のクリルタイに出席し、テムルを推戴したことが知られています。

晩年と死去

トガンについて記録されている最後の事実は、大徳2年（1298年）に6万錠の下賜を受けたことです。そして彼は大徳5年（1301年）に死去しました。彼の死後、子のラオジャンが鎮南王位を承襲することが『元史』に記されています。

家系の複雑さ

『元史』巻107の宗室世系表によれば、トガンの子供たちに関する記述が一致しておらず、特にトク・ブカやコンチェク・ブカ、テムル・ブカなどが彼の子とされる一方で、矛盾が見られます。しかし、多くの後の歴史書では列伝の記載を優先し、トガンの子であるとしています。これにより、トガンの家系の解釈には多くの議論が生じることになりました。

参考資料

• - 志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
• - 杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年
• - 野口周一「元代世祖・成宗期の王号授与について」『中国史における乱の構図』雄山閣出版、1986年
• - 『元史』巻117など各種歴史書

トガンの短い生涯は成功と失敗の両方で彩られ、彼の存在はモンゴル帝国の歴史における複雑な背景を反映しています。

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