トク・テムル (ソゲドゥ家)

トク・テムルとは

トク・テムル（モンゴル語: Toq temür、中国語: 脱黒帖木児、? - 1280年）は、モンゴル帝国の皇族であり、チンギス・カンの末子トルイの庶子ソゲドゥの息子です。彼はシリギをはじめとするトルイ系の諸王を引き連れて、クビライに対して反乱を起こした「シリギの乱」のリーダーとして広く知られています。

出自と経歴

トク・テムルの出自については、『集史』の「トルイ・ハン紀」において、彼が勇敢な戦士であったことが記されています。弓矢の名手で、その技術は多くの者に評価されました。1259年にモンケ・カアンの死後、発生した帝位を巡る争いにおいて、彼は弟のクビライ派を支持することはせず、アリクブケ派に加担しました。この内戦は結果的にクビライ派が勝利し、トク・テムルたちは一時的にその地位を保たれますが、以降もクビライに対する反発心は強く持たれていました。

シリギの乱の勃発

至元3年（1266年）にカイドゥの攻撃が始まると、クビライはトク・テムルを含む「旧アリクブケ派」の王たちを集めた遠征軍を編成しました。しかし、トク・テムルは密かにシリギと共謀し、叛乱を計画しました。彼らは1276年の冬、ノムガン軍の中核を急襲し、これによってシリギの乱が始まりました。トク・テムルは、クビライが行った漢化政策に対抗してモンゴルの伝統を守るため、シリギをカアンに推すことを提案しました。

反乱の進行と結果

シリギの乱は当初成功を収め、トク・テムルはモンゴル高原中央部を掌握しましたが、クビライ側も急速に対抗策を打ち出しました。叛乱軍は数々の戦闘で勝利を収めたものの、オルホン河の戦いでは敗北し、逃亡を余儀なくされます。その後、トク・テムルは再びシリギへの協力を求めますが、彼自身の内紛や裏切りもあって状況はさらに悪化します。

トク・テムルは最終的に捕らえられ、1280年にシリギによって処刑されました。『元史』では、彼が暴虐で人心を失った結果、亡くなったとされています。シリギの乱は、その後も続き、内紛を経て1282年にようやく終結しました。

軍事戦略と人間関係

トク・テムルは戦場で常に灰色の馬に乗っていた逸話があり、その理由は血が目立たないようにするためではなく、戦の男性らしさを強調するためと申し述べたとされています。同時に、彼の周囲には彼の父の敵であったバイバクの子、バラクとブラルキ兄弟が重用されていましたが、彼らの忠誠心の欠如から内部対立を招く結果となりました。これによってトク・テムルは再び反乱軍からの裏切りを受け、自身が掲げた大義名分から遠ざかってしまうことになります。

まとめ

トク・テムルは、モンゴル帝国の中で特異な存在であり、その反乱と銃撃の中で、彼自身の運命だけでなくモンゴルの歴史にも大きな影響を与えました。彼の生涯は内戦の苦悩を反映し、また権力に絡む人間関係の複雑さを物語っています。

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