トグリル

トグリル：モンゴル帝国に仕えたスルドス部族の千人隊長

トグリル（生没年不詳）は、13世紀初頭のモンゴル帝国において、スルドス部出身の千人隊長として活躍した人物です。ペルシア語史料では「Ṭughrīl」と記されています。

生涯と事績

『集史』によると、トグリルは幼少期のチンギス・カンの命を救ったソルカン・シラの一族であったとされています。『元朝秘史』には記述がありませんが、『集史』の千人隊長一覧には、右翼9番目の千人隊長としてその名が記されています。

トグリルは、チンギス・カンの勢力拡大に大きく貢献したと考えられます。スルドス部は、モンゴル帝国の軍事・政治において重要な役割を果たした部族であり、トグリルもその一翼を担っていたと言えるでしょう。

子チャランの悲劇

トグリルにはチャランという息子がおり、彼は第4代皇帝モンケに仕えていました。1259年にモンケが急死すると、帝位継承を巡ってクビライとアリク・ブケの間で内戦が勃発。チャランはアリク・ブケを支持したため、クビライ派の勝利後、「アリク・ブケを唆した」として処刑されました。

スルドス部のその後

チャランの処刑後も、スルドス部とアリク・ブケ家の関係は途絶えることはありませんでした。『集史』によると、メリク・テムル・ウルスにおいて、スルドス部出身の千人隊長が複数存在し、重要な地位を占めていたことがわかります。

このように、トグリルの一族は、モンゴル帝国の成立と発展に深く関与し、大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
松田孝一「メリク・テムルとその勢力」『内陸アジア史研究』第4号、1988年

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