トゲナシヌマエビ

トゲナシヌマエビ（棘無沼蝦）

概要

トゲナシヌマエビ（学名: Caridina typus）は、十脚目のヌマエビ科に属するエビの一種で、主に西太平洋の熱帯および亜熱帯地域に幅広く分布しています。この淡水エビは、おもに川や泉に生息し、その特徴的な体型と生活習慣から注目されています。

特徴

成体のサイズはオスが約25mm、メスは35mm程度で、大きさはメスの方がわずかに大きいです。トゲナシヌマエビは、体型が寸詰まりで紡錘形をしており、体が太く丸みを帯びているのが特長です。また、歩脚は比較的短く、しっかりとした作りをしています。視覚器官である複眼は小型で、前方を見つめています。

トゲナシの名は、額角が短く、複眼との間に存在する鋸歯がほとんど目立たないことから由来しています。このため、ヒメヌマエビやミゾレヌマエビといった類似種からも識別可能です。その外見は、若い個体やオスが半透明の緑色や茶色がかり、内臓が透けて見える特徴があります。一方、メスは比較的暗い茶色の体色が一般的で、背中には白い筋や枝分かれ模様が描かれています。

生態

トゲナシヌマエビは、日本を含む東南アジアからフィジーまで、西太平洋の広範囲に見られます。日本においては、主に日本海側の島根県・隠岐諸島以西、そして太平洋側の千葉県以南の地域で分布しています。特に南西諸島では一般的に見られる存在です。

このエビは暖流に接する河川環境に生息し、時にはヒメヌマエビやモクズガニと共に海岸の湧水でも観察されます。海に幼生期を過ごすため、稚エビは海水を上ることが必要です。中流域や下流域によく見られ、流れの緩やかな場所で落ち葉やゴミの間に隠れています。捕まえると、ピチピチと跳ねるのではなく、大半は地面を歩きます。食性は雑食性で、藻類やデトリタス、生物の死骸を食べて生きています。

繁殖

繁殖は春から夏にかけて行われます。交尾後、メスは約1000から3500個の卵を産み、それを腹脚で抱えて孵化を待ちます。孵化した幼生たちはゾエア形態で、川の流れに乗って海に向かいます。その後約1ヶ月間、プランクトンの生活を送りながら成長し、やがて川へ遡上する稚エビへと成長します。成体の寿命は概ね3年程度と考えられています。

飼育

トゲナシヌマエビはアクアリウムでの観賞用として非常に人気があります。これらは他のヌマエビ類と同様の特徴を持ちますが、ミナミヌマエビよりも少し大きく、ヤマトヌマエビよりは小さいため、丈夫で活発な存在です。ただし、幼生が海水環境を必要とするため、育成には特別な飼育環境が求められることがあります。適切なケアをしないと、幼生の成長に影響が出ることに注意が必要です。

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