トニー・アボット

トニー・アボットについて

トニー・アボットは、1957年11月4日にイギリス・ロンドンでオーストラリア国籍の両親のもとに誕生しました。父のリチャードはニューカッスル・アポン・タイン出身、母のフェイはシドニーの出身で、アボット一家は第二次世界大戦中にオーストラリアに移住しました。1960年、アボットとその家族はシドニーの郊外、チャッツウッドに定住し、そこで幼少期を過ごします。

アボットはシドニー大学で経済学と法学を学び、学生代表委員会の会長を務めるなどして、多彩な活動を展開しました。また、ボクサーとしても活躍し、大学を卒業後はローズ奨学生としてオックスフォード大学で政治哲学の修士号を取得しました。1984年、カトリックの神学校に入学し司祭を目指しましたが、その後退学し、シドニーでニュージーランド人の妻マーガレットエイトケンと出会いました。1988年に結婚し、3人の娘が誕生しました。学生時代から記事執筆に取り組み、政治的な視点から労働組合や左派政党を批判するジャーナリストとしてのキャリアも築きました。

政界入りとキャリア

アボットは1990年から1993年までジョン・ヒューソン元政治家の秘書として働いた後、1994年に連邦議会の補欠選挙で当選し、正式に政界入りを果たしました。以降、ジョン・ハワード政権下で環境大臣や健康保険大臣を歴任し、2009年に自由党の党首に就任しました。アボットのリーダーシップのもと、自由党は退潮傾向にあった中で人気を回復し、2010年には当時の首相ケビン・ラッドを退陣に追い込みます。

2013年9月の総選挙では労働党に大差を付けて政権交代を実現、同年18日に第28代オーストラリア連邦首相に就任しました。就任直後は外交問題や経済政策の面で活動的に取り組み、特に日本との関係を強化しようとしました。

首相としての施策と課題

アボットは首相在任中、様々な経済政策や環境政策を実施しましたが、特にカトリック信者としての立場から、胚性幹細胞研究や人工妊娠中絶、君主制の存続を支持する姿勢が注目されました。また、環境政策においては炭素税の廃止や再生可能エネルギーへの投資縮小などが批判を招き、「オーストラリアの環境に最も優しくない首相」と指摘されることもありました。

また、首相として日本との良好な関係を築くため、2014年に安倍晋三首相と会談し、共同の記念式典に自衛隊を参加させる合意を得るなど、日豪関係の強化に尽力しました。中国との関係においても、与党時代には批判的でしたが、自由貿易協定を締結するなど、外交的な柔軟性を持って対応しました。

しかし、2015年の党内部からの支持率低下により、自由党党首の現職を次第に追われることとなり、2015年9月14日に党首選挙を行い、マルコム・ターンブルに敗北。翌日に正式に首相を退任し、2019年の総選挙では落選しました。

退任後の活動

アボットは2021年に台湾を私的な立場で訪問し、蔡英文総統との会談を通じて、台湾を国際的に支える姿勢を表明しました。また、2022年には日本から旭日大綬章を受章しています。

アボットは保守的な信念を持つ政治家として知られており、未来の政治・外交の考え方に影響を及ぼし続けています。

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