トベラ

トベラ（扉）

トベラは、トベラ科に属する常緑低木で、学名は Pittosporum tobira です。この植物は一般に「トビラノキ」とも呼ばれ、特徴的な悪臭を放つ枝葉があるため、特に節分の日には鬼を追い払うお守りとして戸口に飾られることがあります。この習慣から、「扉の木」という名前に由来し、さらにそれが音の変化を経てトベラとなりました。学名の小名 tobira もこの言葉から派生したものです。また、属名の Pittosporum は、「樹脂」と「種子」を意味するギリシャ語の結びつきから名付けられたもので、熟した果実が粘液を伴った種子を露出する特色に由来しています。

分布・生育地

トベラは日本の広範囲に分布しており、特に東北地方の岩手県、日本海側の新潟県以南、本州、四国、九州、琉球列島、小笠原諸島などに見られます。また、朝鮮半島南部、台湾、中国南部にも自生しています。主に温暖な海岸地域に多く自生していますが、都市部でも公園や街路樹、生け垣として広く利用されています。海岸なればこそ、海浜植物と共に成長し、風には強く、艶やかな葉を密に繁らせる様子は、庭園などでの美しい景観を提供します。

特徴

トベラは、常緑の広葉樹からなる低木または小高木で、高さは約2から6メートルに達します。樹形は、海岸に張り付くようなユニークな形状をしており、下側から枝を広げ、幹が見えないこともしばしばです。樹皮は灰褐色で皮目が目立つ一方、目立った裂け目はありません。若い枝は緑色で、短毛が生えていますが、根の皮や枝からは時折悪臭を感じることがあります。

葉は互生し、主に枝の先端に集中して生えています。革質で艶やかな葉身は、長さ4から8センチ[[メートル]]、幅2から4センチ[[メートル]]の長楕円形または狭倒卵形をしています。葉の主脈は淡い色をしており、全体がやや内側に巻き込んでいます。

花期は4月から6月にかけて訪れ、雌雄異株であるトベラは、枝先に集散花序を形成し、白い5弁の花を咲かせます。甘い香りが漂う花は、初めは白色ですが、徐々に黄色に変化します。雌花は1つの雌蕊が特徴的です。果期は6月で、直径1から1.5センチ[[メートル]]の球形の果実を持ち、熟すと3つに裂け、赤い粘液が付着した多くの種子が露出します。この粘着性があり鳥に運ばれることで、トベラは新たな環境で生育できる機会を得ます。

冬芽は球形または楕円形で、葉の中心部に集まるように配置され、半円形の葉痕が特徴的です。

通常、野生のトベラでは多くの昆虫が生息しませんが、都市部ではトベラに虫えいを作るトベラキジラミが大量発生することがあります。これによって、排泄物が甘露となり、すす病菌が増えることがあります。

まとめ

トベラはその独特な形状や香り、美しい花と果実の様子から、自然環境を彩る重要な植物です。海岸地域だけでなく、都市部でも広く利用されており、特に庭園や公園での存在感を発揮しています。この植物は日本の風土にしっかりと根付き、私たちの生活に彩りを与えてくれます。

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