甘露

甘露（かんろ）

甘露は、古くから様々な意味合いで使用されてきた言葉です。その起源は古代中国の伝承に遡り、仏教、歴史、食文化、そして昆虫学に至るまで、幅広い分野でその名を見ることができます。

起源と伝承

甘露は、古代中国の伝承において、天地陰陽の気が調和した際に天から降るとされる甘い液体のことを指します。これは、君主が徳を備えていることの証とされ、瑞祥として尊ばれました。また、神話に登場する異界の民、沃民（よくみん）がこれを飲んで生きているとも伝えられています。

仏教がインドから中国へ伝来すると、インド神話における不死の霊薬アムリタが、仏典の漢訳において甘露、あるいは醍醐と訳されるようになりました。これは、中国古来の甘露の概念と結びつき、特別な意味を持つ言葉として定着しました。

年号としての甘露

甘露は、中華王朝やその周辺諸国において、元号としても用いられました。以下はその例です。

前漢：宣帝劉詢（紀元前53年-紀元前50年）
魏：高貴郷公曹髦（256年-260年）
呉：末帝孫晧（265年-266年）
前秦：苻堅（359年-364年）
高昌：麴光（525年頃-530年頃）
東丹国：東丹王耶律倍（926年-936年）

これらの年号は、それぞれの時代における政治的な思惑や願いが込められていたと考えられます。

食文化における甘露

甘露は、美味しい飲み物や甘い味付けの比喩としても用いられます。例えば、甘露水や甘露煮という言葉があります。甘露水は清涼飲料水や日本酒の銘柄にも用いられており、甘露煮は小魚などを甘辛く煮た料理を指します。また、マクワウリの地方名（北海道・東北地方）としても「カンロ」という呼び名が存在します。

昆虫学における甘露

昆虫学における甘露は、アブラムシやカイガラムシなどの半翅目昆虫が排泄する糖分に富んだ液体のことを指します。これらの昆虫は、植物の篩管液を吸汁する際に、過剰な糖分と水分を特殊な器官（濾過室）で分離し、速やかに排泄します。この排泄物が甘露と呼ばれ、アリなどの昆虫にとって重要なエネルギー源となります。また、アリは甘露を得る代わりに、これらの昆虫を天敵から守る共生関係を築いている場合もあります。

その他の用法

唐の文宗の時代には、甘露の変と呼ばれる政変未遂事件が発生しました。また、カンロ株式会社が販売するカンロ飴は、多くの人に親しまれているお菓子です。

関連項目

マナ (食物)
カンロ飴

このように、甘露は様々な分野で用いられ、それぞれ異なる意味を持っています。その多様性は、この言葉が持つ奥深さを示していると言えるでしょう。

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