囲い込み

囲い込み（Enclosure）

囲い込みとは、土地の利用形態の一つであり、小規模な土地が複雑に入り組んだ開放耕地を統合し、個別の所有権を明確にして排他性を持たせるプロセスを指します。特に、イギリスにおいては16世紀と18世紀に特筆される動向が見られました。このプロセスは、第一次と第二次の二つの段階に分けられます。

囲い込みのプロセス

囲い込みは、以下の三つの主要な過程から成り立っています：

1. 開放耕地の廃止
収穫後の土壌を共同で放牧するための開放耕地が、個別の所有地に組み込まれる。
2. 入会地の廃止
共同利用されていた入会地が廃止され、個々の土地の利用が進む。
3. 混在地制の廃止
異なる所有者の土地を整理統合し、大規模な耕地を創出する。

開放耕地とは、収穫の後に放牧地として共同利用されることが一般的で、入会地もその一部でした。混在地制では、共同農作業の際に収穫高の不平等を緩和する機能を持っていました。この制度では、人数が少ない農家でも自家用の家畜を飼うことが可能でした。

第一次囲い込み

第一次囲い込みは、主に牧羊の目的で、毛織物業の発展に伴い羊毛の生産を効率的に行うために進められました。この囲い込みは個人の主導で行われ、結果的に多くの農民が職を失いました。批判的な意見も多く、トマス・モアは「羊が人を食い殺している」と表現しました。

第二次囲い込み

第二次囲い込みは、耕作の効率性を高めるために議会主導で実施されました。この段階では、農業革命としてのノーフォーク農法などの高度集約農業の実践が進められ、農民の労働力の需要も高まりました。そのため、第一次囲い込みのような強い批判は少なかったものの、一部の農民が雇用労働者としての地位に置かれる事例が見受けられます。

囲い込み以前の農業

囲い込みが行われる以前のイギリスでは、開放耕地制や混在地制、三圃制などが非効率的に組み合わさっていました。特に三圃制においては、冬期に家畜の飼料が不足し、共同で耕作を行う必要がありました。この制度が農業生産の効率性を低下させ、不公平感を生むこともありました。

産業革命との関連

かつては、囲い込みによって土地を失った農民が都市部に移住し、産業革命に不可欠な労働力となったと言われました。しかし、近年の研究では、その影響の度合いや直接的な人口移動はあまり見られなかったとの見解も増えてきています。第一次囲い込みは地域に限られ、第二次囲い込みでは農村での労働力の需要が高まったため、職を失った農民がすぐに都市に流出することはなかったとされています。

景観の変化

議会主導の囲い込み運動の結果、新たに生垣や石垣で囲まれた「囲い込み地」が誕生しました。中世の農地に比べて、囲い込み地は広さがあり、形状も整備されていました。特に生垣ではサンザシが使用され、周囲には溝が掘られるなどの工夫が施されました。

その他の用法

日本語において「囲い込み」は、資源や人材を独占的に確保することや、危険なものを封じ込める行為を指す場合があります。また、顧客の囲い込み戦略はマーケティングの重要な要素となっており、競争優位性を確保するために行われます。

要約すると、囲い込みは土地の効率的な使用を普及させるだけでなく、農民の生活様式や社会構造にも影響を与える重要な歴史的現象です。

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