トマス・ペイン

トマス・ペインの生涯と業績

生い立ちと無名時代

トマス・ペインは1737年にイギリス、ノーフォークのセットフォードに生まれました。コルセット製造業者の子として育ち、早くから歴史や数学、科学を学びました。13歳で父親の店で職人として修業を始めた後、16歳の頃には船乗りを目指して家出をし、以後は多様な職に就くことになります。22歳と34歳に結婚しましたが、どちらも離婚しました。1772年には収税吏の賃金に関するパンフレットを執筆し、文人オリヴァー・ゴールドスミスと知り合います。1774年にはベンジャミン・フランクリンに紹介され、アメリカへの移住を決意しました。

アメリカに移った後、月刊誌『ペンシルベニア・マガジン』の編集主任として活動し、購読者を急増させました。彼は、当時の社会問題、特に最低限所得保障や年金について早くから言及しました。また、ペンシルベニア州議会に独立要求を支持する意見を送りました。

アメリカ独立革命への寄与

1776年1月、ペインは『コモン・センス』という政治パンフレットを発表。これは植民地の独立を訴えたもので、瞬く間に売れ行きが伸び、後に15万部を超える版を重ねました。この作品は、民主的平和論を謳い、イギリスの支配に対抗する呼びかけとなりました。この後、ペインはペンシルベニア連隊に加入し、ワシントンの秘書としても活動しました。

また、彼は『危機』という小冊子を発表し、アメリカ人の士気を高めるために尽力しました。1779年には賃金が滞納されていた中から500ドルをワシントン軍に寄付し、これが銀行設立のきっかけとなりました。ペインが書いた奴隷廃止法案の前文は、彼の独立に対する貢献の一環として重要視されました。

フランス革命とその後の影響

1785年、ペインは鉄橋の設計を行い、次第に自らの革新思想を広めていきました。1789年にはフランスに渡り、『人間の権利』を発表し、世襲君主制や貴族に対する厳しい論を展開しました。この作品は200万部以上売れ、社会運動に大きな影響を与えました。しかし、彼の反政府的な発言により、イギリス政府から追放されることになります。

フランスでは、国民公会のメンバーとして新憲法の草案作成に携わり、またルイ16世の処刑に反対する演説を行いました。ペインはその後逮捕されましたが、友人の助けによって釈放されます。再び公的な地位を得たものの、彼の理神論的思想が問題視され、敵視されることもありました。

晩年と遺産

1802年にアメリカに戻ったペインは、当時の政治情勢や連邦党と対立し、次第に孤立を深めました。奴隷制反対を訴え続けましたが、次第に彼の思想は過去のものであるかのように扱われました。彼はニューヨークで没し、教会での葬儀を拒否され、ロングアイランドに埋葬されました。

1819年、愛国者のウィリアム・コベットによりイギリスへ改葬される試みが行われますが、最終的には成功しませんでした。これにより、トマス・ペインの人生と業績は、彼の時代を超えて非凡でありながら、時代の逆風にさらされながらも、その影響は後世へと引き継がれています。

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