人間の権利

人間の権利

トマス・ペインによる『人間の権利』は、1791年に出版された作品で、エドマンド・バークの『フランス革命の省察』への反論として位置づけられています。この書は、フランス革命を擁護しつつ、自由思想や人間の平等といった重要な概念を具体的に展開しています。しかし、文章の構成が断片的であるため、完全な形にはなっていないとされています。著作は2部から成り立ち、各部分には章立てが不明確なままであり、後世の出版社や翻訳者によって内容に応じた分割がなされてきました。

構成と内容

『人間の権利』は第1部と第2部に分かれており、最初の部分はアメリカ合衆国大統領ジョージ・ワシントンへの献辞や序文から始まり、続いて本論が展開されます。第2部ではラファイエット氏への献辞があり、序論から始まり、多様なテーマに関する章が続きます。特に、社会と文明、旧政府の起源、権利の憲法化など、多くの重要な社会的および政治的問題に言及しています。

思想的背景

この著作におけるペインの思想は、啓蒙時代の影響を受けています。特にジョン・ロックの『統治二論』は彼に大きな影響を与え、権利の起源を自然に求める立場を強調しています。ペインは、法律によって権利が与えられるとする考えを否定し、権利は人間に本来備わるものであり、憲章や政府が権利を奪う可能性があることを論じます。彼は、個々の市民が自身の人格と尊厳を尊重し合う契約に基づいて政府を形成することの重要性を強調しています。また、政府の本来の役割は、全ての人々の固有の権利を擁護することであると主張し、国民の利益に反する制度は違法であるとしています。

フランス革命に対する見解

ペインの『人間の権利』は、特に貴族制や世襲政治に強く反対しています。バークが提唱する世襲政治を批判し、真の民主主義の必要性を訴えています。彼は、貧困を理由に多数が支配される社会に対して深い懸念を抱いており、政府の役割を国民の権益を守ることと定義しています。

ペインの影響

ペインはアメリカ独立戦争においても重要な役割を果たしました。彼の思想は、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言の基盤となり、それらの文書に見られる基本的な権利の概念を象徴しています。また、フランス革命が進行する中、ペインは自身の考えを広めるためにフランスに渡り、国民会議に選出されることになります。彼は、君主制の処罰を求める声が高まる中で、君主の亡命先を提案しましたが、この意見は採用されませんでした。

最後に

『人間の権利』は、19世紀の人権思想に大きな影響を与え、その後の革命や政治運動にも多様な形で受け継がれていきました。ペインの思想は、権利の普遍性と個人の尊厳を常に訴えかけ、現代における人権の基礎とも言えるものです。

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