トマス・ル・ディスペンサー (初代グロスター伯)

初代グロスター伯トマス・ル・ディスペンサー

初代グロスター伯トマス・ル・ディスペンサー（1373年9月22日 - 1400年1月13日）は、第4代ル・ディスペンサー男爵エドワード・ル・ディスペンサーの息子として生まれました。彼はリチャード2世の治世下で重要な役割を果たしましたが、その後の政治的な変動の中で悲劇的な最期を遂げることになります。

生涯

トマスはリチャード2世を支持し、トマス・オブ・ウッドストックら訴追派貴族と対立しました。1397年、彼は第7代グロスター伯ギルバート・ド・クレアの子孫という縁からグロスター伯位を授けられます。同年から1399年までアイルランドに滞在し、リチャード2世を君主として受け入れるようゲール人の族長たちを説得しようとしましたが、その努力はほとんど実を結びませんでした。

しかし、運命の歯車は狂い始めます。ヘンリー・ボリングブルックがイングランドに帰還し、ヘンリー4世として即位すると、トマスは当初彼を支持しました。しかし、過去の経緯、特にトマス・オブ・ウッドストックの死に関与したことが問題視され、死刑に値する罪でグロスター伯位を剥奪されてしまいます。

失意の中、トマスはヘンリー4世を暗殺し、リチャード2世を王位に復帰させるという大胆な計画、エピファニー蜂起に参加します。しかし、この計画は2代ヨーク公エドワード・オブ・ノリッジの裏切りによって事前に露呈し、失敗に終わります。トマスは西部へ逃亡しますが、エピファニー蜂起の陰謀者たちの多くは、国王に忠誠を誓う町民の暴徒に捕らえられ、殺害されました。トマス自身も暴徒に捕らえられ、1400年1月13日にブリストルで斬首刑に処されました。

結婚と子女

トマスは、初代ヨーク公エドマンド・オブ・ラングリーとイザベラ・オブ・カスティルの娘コンスタンスと結婚しました。2人の間には以下の子供が生まれています。

エリザベス（1398年頃没） - 早世
リチャード（1396年 - 1414年） - 4代バーグハーシュ男爵
エドワード（1400年以前生） - 早世
ヒュー（1400年頃 - 1401年）
イザベル（1400年 - 1439年） - 初代ウスター伯リチャード・ビーチャムと結婚、後に13代ウォリック伯リチャード・ド・ビーチャムと再婚

トマス・ル・ディスペンサーの生涯は、中世イングランドの政治的な陰謀と裏切り、そして権力闘争の犠牲となった人々の物語を象徴しています。彼の短い生涯は、激動の時代を生き抜いた貴族の運命を如実に示していると言えるでしょう。

参考文献
thePeerage.com
* Otway-Ruthven, A.J. History of Medieval Ireland Barnes and Noble reprint New York 1993

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