トミー・ベリー

トミー・ベリー：オーストラリアと香港を舞台に活躍した名騎手

トミー・ベリーは、オーストラリア出身の世界的に活躍した騎手です。1991年、オーストラリアの競馬一家に生まれました。父は元騎手で調教師のケビン・ベリー、母もまた馬乗りという環境で育ち、双子の弟ネイサンとともに幼少期から競馬に親しんでいました。兄弟揃って騎手を目指し、見習い騎手としてデビューを果たします。

才能溢れるトミーは、早くから頭角を現しました。2009年から2010年にかけては、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の見習い騎手チャンピオンを獲得。通常4年かかる見習い期間を3年余りで修了するなど、類まれな才能を示しました。そして2012年、G1レースであるゴールデンローズステークスを制覇し、G1初勝利を挙げます。

2013年には、シドニーの有力厩舎であるウォーターハウスと契約。ゴールデンスリッパーステークス、ドンカスターマイルと立て続けにG1レースを制覇する快挙を成し遂げます。この活躍が香港のトップトレーナー、ジョン・ムーア氏の目に留まり、短期免許を取得して香港に乗り込みます。なんと、香港での免許初日となるレースでG1クイーンエリザベス2世カップを制覇。わずか1ヶ月で3つのG1レースを勝利するという驚異的な記録を打ち立てました。

2014年もムーア氏の誘いを受け、香港で騎乗を続けます。デザインズオンロームの主戦騎手として香港クラシックカップ、香港ダービーを連勝するなど活躍していましたが、この年、弟ネイサンが遠征先で倒れたという悲報を受けます。トミーはすぐにシドニーに戻り弟を見舞いましたが、ネイサンは脳疾患により23歳の若さで亡くなりました。この悲劇的な出来事に大きなショックを受けたトミーは、しばらく活動を休止することも考えましたが、再び香港に戻り騎乗を再開。デザインズオンロームとのコンビで、クイーンエリザベス2世カップを2年連続で制覇するという偉業を成し遂げました。

2015年前半にはウォーターハウス厩舎を離れフリーランスとして活動を開始。オーストラリアと香港両国でG1レース勝利を重ね、TJスミスステークスでは3連覇を達成するなど、輝かしい成績を残しました。2017-2018年シーズンからは、ジョン・ムーア厩舎と契約を結び、香港を拠点として活動するようになりましたが、成績が低迷したり、家族の香港生活への適応が難しかったりしたことから、同シーズン限りで香港での騎乗を終了しました。

その後は再びオーストラリアを拠点に騎乗を続け、日本でも2015年と2016年に短期免許で騎乗経験があります。JRA通算135戦23勝を挙げ、2016年の安田記念ではモーリスに騎乗し2着という好成績を残しました。オーストラリアで日本からの遠征馬にも度々騎乗しており、国際的な舞台で活躍していました。

トミー・ベリーの主なG1勝ち鞍は、オーストラリアではゴールデンローズステークス、エプソムハンデキャップ、ザ・メトロポリタン、ゴールデンスリッパーステークス、ドンカスターマイル、クイーンオブザターフステークス、シドニーカップ、ザTJスミスステークス、タタソールズティアラ、TJスミスステークス、フライトステークス、マニカトステークス、オーストラリアンダービー、クイーンズランドダービー、ランドウィックギニーズ、オールエイジドステークスなど多数。香港では、クイーンエリザベス2世カップ、香港ダービー、チェアマンズスプリントプライズ、香港ゴールドカップ、香港スチュワーズカップ、クイーンズシルヴァージュビリーカップ、香港チャンピオンズ&チャターカップなど。シンガポールでもシンガポール航空インターナショナルカップ、シンガポールゴールドカップを制しています。

数々の栄光と悲しみを経験しながらも、第一線で活躍し続けたトミー・ベリー。オーストラリアと香港を舞台に、その類まれな才能と強靭な精神力で、競馬史に名を刻んだ名騎手と言えるでしょう。

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