トヨタ・イノーバ

キジャン イノーバ：トヨタが展開する多目的車の進化

キジャン イノーバ（KIJANG INNOVA）は、トヨタ自動車がキジャンの後継モデルとして、主にインドネシアや中近東などの新興国市場で販売している多目的車（MPV）です。3列シートを備えたモデルが中心で、ファミリー層を中心に広く支持されています。その歴史は、新興国市場をターゲットとしたトヨタの世界戦略車、IMV（Innovative International Multi-purpose Vehicle）シリーズから始まりました。

初代 AN40型（2004年 - 2016年）：IMVプラットフォームを基盤とした堅牢なモデル

2004年に登場した初代キジャン イノーバは、IMVプロジェクトのラダーフレームを採用し、7代目ハイラックスやフォーチュナーと共通のプラットフォームを使用していました。このラダーフレーム構造は、悪路走破性と耐久性を重視する新興国市場のニーズに応えるものでした。駆動方式はFR（フロントエンジン・リヤドライブ）で、リーフサスペンションも採用されており、従来のキジャンの特徴を受け継いでいます。エンジンは、2.0L直列4気筒ガソリンエンジン（1TR-FE型）または2.5L直列4気筒コモンレールターボディーゼルエンジン（2KD-FTV型）が搭載されました。また、2007年には台湾市場向けに2.7Lの2TR-FE型エンジンが追加されています。

初代モデルは、2011年と2013年に大規模なフェイスリフトを実施。特に2013年の改良では、インドネシアのスタッフがデザインを担当し、大型グリルが採用されるなど、内外装に大幅な変更が加えられました。また、安全装備としてデュアルエアバッグが全車に標準装備されるようになりました。

2代目 AN140型（2015年 - ）：より洗練されたデザインと快適性

2015年に登場した2代目キジャン イノーバは、初代モデルの堅牢性を維持しつつ、より洗練されたデザインと快適性が追求されました。2017年には主力モデルである「ベンチャー」が発売され、市場での人気をさらに高めました。2020年にはフェイスリフトが行われ、内外装のデザインが変更されました。2022年には、イノーバをベースとしたコンセプトEVが発表され、電動化への取り組みも示唆されました。

3代目 AG10型（2022年 - ）：TNGAプラットフォームによる革新

2022年、キジャン イノーバは3代目へとフルモデルチェンジ。最大の特徴は、トヨタのTNGA-Cプラットフォームを採用し、モノコック構造の前輪駆動車となった点です。これにより、ハイブリッドパワートレインの搭載が可能となり、電動化への大きな一歩を踏み出しました。インドネシアでの正式名称は「キジャン イノーバ ゼニックス（KIJANG INNOVA ZENIX）」となり、「ゼニックス」は「最高性能」を意味する「zenith」と「クロスオーバー」を意味する「x」に由来します。また、インドでは「イノーバ ハイクロス（INNOVA HyCross）」として発表されました。パワーユニットは、2.0Lガソリンエンジンと2.0Lガソリンエンジン＋モーターのハイブリッドが設定され、ディーゼルエンジンの設定はなくなりました。トランスミッションは10速CVTのみとなり、MTは廃止されています。

車名の由来

イノーバという名前は、「イノベーション（Innovation）」に由来します。かつてホンダが生産していた「アスコットイノーバ」と同じ名前ですが、トヨタ・イノーバは海外専売のため、商標権侵害の問題は発生しません。

まとめ

キジャン イノーバは、その誕生から現在に至るまで、市場のニーズに合わせて進化を続けてきました。特に3代目では、プラットフォームの刷新やハイブリッドモデルの導入により、新たな時代に対応する多目的車として生まれ変わっています。今後も、新興国市場におけるトヨタの重要な戦略車として、さらなる発展が期待されます。

関連項目

トヨタ・ハイラックス
トヨタ・キジャン
トヨタ・アバンザ
トヨタ・イノーバEV

外部リンク

トヨタ・キジャンイノーバ（インドネシア）
トヨタ・イノーバ（台湾）

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