トヨタ・キジャン

トヨタ・キジャン：多目的自動車の進化と多様な展開

トヨタ・キジャンは、東南アジア、インド、南アフリカなどで販売された多目的自動車です。ワゴンタイプとピックアップタイプが存在し、各地域で異なる名称で親しまれてきました。インドネシアでは「キジャン」、マレーシアでは「ウンセル」、台湾とベトナムでは「ゼイス」、フィリピンでは「タマラオ・レボ」、インドでは「クオリス」、南アフリカでは「コンドル」として知られています。

初代（1976年 - 1981年）

1976年12月、フィリピンで「タマラオ」として発売され、翌年にはインドネシアでも販売が開始されました。初期の設計は、大型プレス機やスポット溶接の自動化以前の技術に基づいており、アジア各国の悪路や過積載を考慮した堅牢なシャシーを採用。モノコック構造ではなく、はしごフレームにカローラ系の足回りとパワートレインを組み合わせ、シンプルな車体を載せています。デザインは、当時現地でノックダウン生産されていたランドクルーザー40系の影響を受けており、エンジンフード、フロントグリル、鉄板むき出しのインパネなどが特徴です。

トヨタ・アストラ・モーターでは、ピックアップ、ワゴン、右リアドアを廃止して左側を折戸にしたミニバス、カウルシャーシなどが製造されました。特にカウルシャーシには、「カロセリ」と呼ばれるコーチビルダーが独自に設計したボディを架装したものが多く見られました。これらのボディスタイルは、純正車体に準拠したものから全く異なるものまで多岐にわたり、地域によっては独自の進化を遂げた車体も存在しました。搭載エンジンは1.2Lの3K型ガソリンエンジンで、4速MTと組み合わされました。このエンジンとトランスミッションの組み合わせは、カローラをはじめとする多くのトヨタ製小型FR車で実績のあるものでした。

2代目（1981年 - 1986年）

1981年に登場した2代目キジャンは、エンジンフードが全幅と同じになり、フロントグリルのヘッドランプ間隔が広げられるなど、若干近代的なスタイルとなりました。しかし、依然として平面的なキャビンは、初代の愛らしさを失わせる結果となりました。搭載エンジンは1.3Lの4K型に変更されました。

3代目（1986年 - 1997年）

1986年に登場した3代目では、車体部品が全てプレス品となり、外観が大きく変化しました。「Full Pressed Body」のデカールが貼られ、「スーパー・キジャン」と呼ばれるようになりました。内装もトリムが施され、樹脂製のダッシュボードや吊り下げ式クーラーがオプション設定されるなど、品質が向上しました。カロセリ製のボディも引き続き存在し、実用的なものからスポーティなもの、ラグジュアリーなものまで様々なカスタムモデルが登場しました。搭載エンジンは1.5Lの5K型に拡大され、トランスミッションはフロアシフトの4速MTでした。1992年にはマイナーチェンジが行われ、エンジンが1.8Lの7K型となり、5速MTも追加されました。インドでは、この型のキジャンをベースにした現地生産モデルが「クオリス」として2000年から2004年まで販売されました。

4代目（1997年 - 2007年）

1997年に登場した4代目キジャンには、1.8Lの7K型、2.0Lの1RZ型に加え、初のディーゼルエンジンとなる2LのSOHCエンジンが搭載されました。2000年にはマイナーチェンジが行われ、外観が変更されたほか、ガソリンエンジンがEFI仕様の7K-E、1RZ-Eに変更されました。2004年に後継車種のキジャン・イノーバにモデルチェンジした後も、ピックアップトラックは2007年まで販売が継続されました。

生産拠点

トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア（TMMIN）
トヨタ・アストラ・モーター（TAM）

車名の由来

キジャン (Kijang)：インドネシア語で「鹿」の意味
タマラオ (Tamaraw)：タガログ語で「牛」の意味
クオリス (Qualis)：日本専売モデルのマークIIクオリスとは無関係
コンドル (Condor)：UDトラックス（旧:日産ディーゼル）のトラックとは無関係

関連項目

トヨタ・デリボーイ
トヨタ・イノーバ
いすゞ・パンサー
スズキ・APV
三菱・フリーカ

外部リンク

トヨタ・アストラ・モーター（インドネシアの販売会社）

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