トヨタ・エスティマエミーナ

エスティマエミーナ / エスティマルシーダ (初代 XR10/20G型)

エスティマエミーナとエスティマルシーダは、トヨタ自動車が1992年から2000年まで製造・販売していたミニバンです。ここでは、姉妹車であるエスティマルシーダについても合わせて解説します。

概要

1990年に登場したエスティマは、斬新なデザインで注目を集めましたが、当時の日本ではボディサイズが大きすぎました。そこで、エスティマのコンセプトを継承しつつ、日本の小型自動車（5ナンバー）枠に収まるように開発されたのがエスティマエミーナ/ルシーダです。エスティマがトヨタ店とカローラ店の両方で販売されていたのに対し、エミーナはトヨタ店、ルシーダはカローラ店での取り扱いとなりました。

乗用ワゴン専用として設計されたため、エミーナ/ルシーダには商用車（ライトバン）の設定はありませんでしたが、ビニールシート仕様の「D」グレードが実質的な商用向けモデルとして存在しました。

初代 XR10/20G型（1992年 - 2000年）

1992年1月に発売。当時人気を博していた日産・バネットセレナに対抗するため、全幅を5ナンバー枠に収めました。また、エスティマとの差別化を図るため、フロントグリル、テールランプ、内装などのデザインを独自のものに変更しています。雑誌などでは「エスティマの幅を狭めたモデル」と表現されることもありますが、実際にはエスティマの開発当初から5ナンバー版のナローモデルも検討されていました。

バネットセレナの好調を受けて、後輪サスペンションを固定車軸とした廉価グレードを追加し、価格帯を下げて販売されました。エスティマが当初モノグレードであったのに対し、エミーナ/ルシーダはビニールシート仕様の廉価版「D」から、エスティマと同様の豪華さを備えた高級版「G」まで、幅広いグレード展開となっていました。前期型には、エスティマと同じ4輪独立懸架の足回りを持つスポーツグレード「S」も用意されていました。

トランスミッションはエスティマと同様の4速ATですが、発売当初は全グレードに5速MTが設定されていました。ただし、最上級グレードの「G」にMTが存在したのはわずか1年弱でした。コラムシフトのAT車とは異なり、MT車は操作性を向上させるためにフロア式に変更されています。これにより、ウォークスルー機能はなくなりました。MT車のシフトブーツコンソールの形状は、ガソリン車とディーゼルターボ車で異なり、ディーゼルターボ車にはコンソールの後ろ側に「小物入れ」が付いており、全体的に縦長になっています。ガソリン車のコンソールには小物入れがないため、ディーゼルターボ車と比較して短くなっています。パーキングブレーキは、AT車、MT車ともにハンドブレーキ式ですが、レバーが運転席右側という特徴的な場所に設置されています。

内外装から足回りに至るまで、エスティマよりも低コストの部品を広範囲に採用することでコストダウンを徹底し、低価格をアピールしました。しかし、ロワーグレードに引っ張られた価格帯は市場の実情とは乖離しており、実際の販売台数でボリュームゾーンとなるグレードの価格はセレナよりも高くなっていました。

競合車であるバネットセレナに対し、同程度の価格帯までカバーしたこと、バネットセレナよりも室内が広いこと、旧来のキャブオーバー型ワンボックスカーに不満を感じていた層からの支持を得られたこと、これまでにない外観が受け入れられたことなどから、販売は好調でした。ピーク時には、ルシーダが約1万2,000台、エミーナが約8,000台もの月間販売台数を記録し、月間4,000台程度であったバネットセレナを大きく上回りました。

グレード展開と主な変更点

1992年1月：発売。グレードは「Gラグジュアリー」、「G」、「S」、「X」、「F」、「D」の6種類で、全車にMT設定がありました。
1993年5月：ジョイフルキャノピー装着車を新設定。全高、室内高を拡大し、開放感のある室内としました。「S」、「D」グレードを廃止。「Gラグジュアリー」、「G」のMT設定も廃止。
1994年6月：「Xリミテッド」ベースの特別仕様車を設定。
1995年1月：マイナーチェンジ。ルシーダは同色グリルやエアインテーク付きバンパー、エミーナはメッキグリルやワイド感のあるバンパーに変更。グレードは「F」が廃止され「Xラグジュアリー」を新設定。MTは「X」のみに。
1995年8月：特別仕様車「Xリミテッドミドルルーフ」を設定。
1996年8月：マイナーチェンジ。ヘッドランプ形状をルシーダは楕円型、エミーナは角型に変更。ABS、デュアルエアバッグなどを全車標準装備。スポーティな「アエラス（AERAS）」を新設定。ガソリン車のMTを廃止。
1996年10月：「X」をベースにした特別仕様車「Xリミテッド」を発売。
1997年4月：一部改良。
1998年1月：一部改良。オドメーターをデジタル表示に変更。「Gラグジュアリー」を廃止し「エルセオ（ELUCEO）」を追加。
1999年12月：生産終了。
2000年1月：エスティマのフルモデルチェンジに伴い販売終了。エミーナ/ルシーダは1代限りで消滅。

車名の由来

ESTIMA：「尊敬すべき」という英語estimableに由来
EMINA：「卓越した、抜き出た、高名な」という英語eminentに由来
LUCIDA：「星座の中の一番明るい星」という英語lucidに由来

販売店

トヨタ店（エミーナ）
トヨタカローラ店（ルシーダ）

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