トヨタ・カローラWRC

カローラWRCについて

カローラWRCは、トヨタ自動車が世界ラリー選手権（WRC）に参戦するために専用に開発した競技車両で、そのベース車両は欧州向けの3ドアハッチバックモデルのカローラ（AE111型）です。このモデルは1997年に初めて登場し、トヨタのラリーチームにおける成功を支える重要な存在となりました。

背景と開発経緯

トヨタは1990年代にグループA規定に基づくセリカを使用していましたが、よりコンパクトな車両群であるスバル・インプレッサや三菱・ランサーエボリューションによって、セリカのサイズは競争上のハンディとなりつつありました。そこで、1997年より新たに導入されたワールドラリーカー（WRカー）規定に従い、カローラをベースにした新たな競技専用車の開発を決定しました。

カローラは、当時トヨタの欧州販売の多くを占めており、マーケティング上も有利でした。加えて、エンジン規定の特例を取得することで、セリカから受け継いだ3S-GTEエンジンを搭載することができました。このエンジンはボディに傾斜配置されることで、コンパクトなサイズながらも高出力を実現しました。

開発とテスト

トヨタは、1996年に1年間の出場停止により開発の時間を持ち、この間に優れたエンジニアたちによってカローラWRCが完成されました。1997年には第1号車が完成し、フレディ・ロイクスやディディエ・オリオールと共にテストを繰り返し、同年のラリー・フィンランドでデビューを果たしました。

開発に際し、カローラのサイズによってコンポーネントのレイアウトに制約が多かったものの、優れたドライバーとチームの力を結集し、三菱やスバルと対等、あるいはそれ以上の戦闘力を持ちました。

外装とメカニズム

カローラWRCは、短いオーバーハングが特徴のハッチバックボディで、日本仕様のカローラとプラットフォームを共有しています。コーナリング性能を高めるためにホイールベースは延長されており、特に冷却効果を考慮してエアスクープがデザインされています。1997年モデルでは一体成型のフロントスポイラーが採用されていましたが、未舗装路での耐久性を考えると翌年から分割タイプに変更されました。

エンジンはセリカと同じ商用の3S-GTE型が使われ、ターボと共に様々な改良が施されてきました。また、四輪駆動方式はデビュー当初は伝統的なトルクスプリットシステムを採用し、後に電子油圧制御に移行しました。

競技成績

カローラWRCは1998年からWRCに本格参戦を開始しました。初年度には、サインツがラリー・モンテカルロで初勝利を飾ると、その後も数々の大会で結果を残しました。しかし、1998年の最終戦でのエンジントラブルにより、ドライバーズチャンピオンを逃し、マニュファクチャラー部門でも年間2位となる悔しい結果に終わりました。1999年には信頼性を向上させ、マニュファクチャラーズ部門でのタイトルを獲得しましたが、同年でのWRCからの撤退が決定しました。

影響と遺産

ワークス撤退後も、カローラWRCはプライベーターによって使われ続け、多くの若手ドライバーたちにとって重要な経験の場となりました。さらに、他のラリー選手権でも成功を収めるなど、その名は今も多くのファンに親しまれています。これらの実績が、トヨタのラリーレース界における地位を確立するのに大いに寄与しました。

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