トヨタ・クラウンエイト

クラウンエイト（CROWN EIGHT）

クラウンエイトは、トヨタ自動車が1964年から1967年にかけて生産した大型の高級乗用車です。このモデルは日本製乗用車として初めてV型8気筒エンジンを搭載した車両として注目を集めました。クラウンエイトの開発は、後のトヨタ・センチュリーの誕生にも大きく寄与しました。

歴史的背景

1955年に初代クラウンが登場した後、1960年代初頭にはオーナーカーやタクシーとしての人気を博しましたが、官公庁や大企業の公用車としてはアメリカの大型車が主流でした。そこでトヨタは新たな市場を開拓するため、1963年にRS40系クラウンを基にした大型セダンを参考出品し、翌年の1964年4月に「クラウン・エイト」として正式に発売しました。このモデルはトヨタ初の3ナンバー車でもありました。

クラウンエイトの型式はVG10型であり、クラウンとは異なる別の車種として認識されました。東京店頭渡し価格は165万円に設定され、生産台数の保守的な目標は年間500台でした。競合モデルであるプリンス自動車の「グランド・グロリア」は皇室に納入されましたが、クラウンエイトも政治家の公用車として使われるなどの実績を上げました。1965年にはマイナーチェンジが行われ、普及グレードの「スペシャル」と4速フロアシフト車が追加されました。

エンジンとボディ構造

クラウンエイトの最大の特徴は、日本製乗用車として初めて採用された水冷V型8気筒エンジン（2,599cc、115 PS）です。このエンジンは全てアルミ製で、軽量かつ効率的な設計がなされていました。ボディは、RS40系クラウンのデザインを基に、全長を120mm延長し、全幅も150mm広げたサイズとなっており、合計で4,720mmの長さと1,845mmの幅を誇ります。このサイズは、2022年現在では最大幅となっており、将来的に新たに発売されるモデルにその記録を譲る見込みです。

他の競合車両が既存ボディにエンジンを載せ替えただけに対し、クラウンエイトは本格的な大型セダンとしてのプロポーションと快適な居住空間を提供していました。その広さは「シートを倒して麻雀ができるほど」と評されるほどでした。

豪華な装備

クラウンエイトには、高級志向な装備が数多く取り入れられました。当時の日本車としては画期的な2速トヨグライドオートマチックトランスミッション、パワーステアリング、パワーウィンドウ、電磁式ドアロック、コンライト（ライトコントロール）、オートドライブ（クルーズコントロール）などが全車に標準装備されていました。この中でもクルーズコントロールの搭載は日本の車では初でした。また、前後の三角窓が電動で開閉可能でした。しかし、電磁式ドアロックは後に問題が発生しました。バッテリー切れの際、電磁ラッチが作動せずドアを開けられないという欠点があり、後のモデルにはこのシステムは受け継がれませんでした。

その他のエピソード

クラウンエイトが販売されていた時期、愛知トヨタ自動車の社長である山口昇は競走馬の馬主でもありました。彼は自身の馬に「クラウンエイト」と名付けようとしたものの、「商品名と同じ名前は認められない」という理由で却下され、最終的には「エイトクラウン」と名付けられました。この馬は後に阪神3歳ステークスと宝塚記念を制覇し、多くのファンに愛されました。

総生産台数とその後の展開

クラウンエイトの総生産台数は3,834台であり、1967年7月に生産を終了しました。その後もクラウンシリーズは進化を遂げ、1987年には新たなV型8気筒エンジン搭載車が登場しましたが、クラウンエイト自体の名は特に特異な存在として記憶されています。歴史に残る一台として、多くの自動車愛好家やクラシックカーのコレクターに評価され続けています。

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