トヨタ・ラクティス

トヨタ・ラクティス：コンパクトで広々、そして経済的なトールワゴン

トヨタ自動車が製造・販売していたコンパクトトールワゴン、ラクティス。初代ファンカーゴの後継として、ヴィッツをベースに開発され、高い人気を博しました。街乗りから長距離走行まで対応できる実用性と、経済性に優れた走行性能、そして広い室内空間が大きな魅力でした。

初代ラクティス（P100型、2005年 - 2010年）

初代ラクティスは、後にトヨタのスポーツカー開発でも手腕を発揮する多田哲哉氏を開発主査に迎えました。開発コンセプトは「高速大容量スタイリング」。小排気量エンジンながら広い室内空間を実現し、1.5L・FF車は18.6km/L（10・15モード）という優れた燃費性能を達成しました。また、16インチの大径タイヤやクルーズコントロール、パドルシフトなど、コンパクトカーとしては充実した装備が特徴です。

安全性能にも配慮されており、前部衝突時の衝撃吸収構造は、バンパー、サイドメンバ、ラジエーターサポートを一体化することでエネルギー吸収を高めています。さらに、衝突時の生存空間を最大限に確保するための工夫が凝らされています。

インテリアでは、FF車には片手で簡単に収納できる「ダイブインシート」を採用し、広い荷室空間を確保。4WD車はプロペラシャフトの関係でダイブインシートは採用できませんでしたが、ダブルフォールディングシートにより広い空間を確保していました。

開発期間はわずか9カ月半という短期間で、これは2023年現在でもトヨタ車最短記録と言われています。発売当初は日本国内専用車でしたが、後期型からは香港やマカオでも販売され、世界各国に輸出されました。

初代ラクティスの主な変更点（ファンカーゴから）

コラムシフトからインパネシフトへ変更
メーターレイアウト変更（センターから運転席前へ）
大型ガラスルーフ「パノラマルーフ」設定
Super CVT-iの採用
シートアレンジの改善
ハッチバックドアの形状変更（横開きから上下開きへ）
ハイマウントストップランプの標準装備

2代目ラクティス（P120型、2010年 - 2016年）

2代目ラクティスは、三浦清克氏を開発主査に迎え、富士重工業（現SUBARU）のエンジニアも開発に参加した初の共同開発車種となりました。「ヴァーソ・S」として欧州市場でも販売され、世界各国で様々な名称で販売されました。

先代と比較して室内幅が40mm拡大され、後席の居住性も大幅に向上しました。FF車にはコンパクトクラス初となる、レバー操作で簡単に格納できる6:4分割チルドダウン機構付きリアシートを採用し、使い勝手の向上を図りました。一方で、走行安定性を高めるため、全高を低くしたため、室内高は若干低くなりました。

1.3L車はDual VVT-iを搭載した1NR-FE型エンジンに換装され、燃費性能も向上。空力性能の改善や軽量化も実施し、FF車は「平成22年度燃費基準+25%」を達成しました。

安全性能では、S-VSC&TRCを全車標準装備とするなど、安全性能の強化が図られています。また、4WD車の駆動システムも進化しました。

2代目ラクティスの主な変更点（初代から）

インパネシフトの位置変更
アイドリングストップシステム「SMART STOP」設定
エンジンスタートボタンの位置変更
メーターレイアウト変更
4WD車へのSuper CVT-i採用
FF車のリアシートの容易な格納機構
テレスコピックステアリングの廃止（一部グレード、後期型で復活）

福祉車両としてのラクティス

ラクティスは、初代、2代目ともに福祉車両「ウェルキャブ」も設定されていました。車いす仕様車には、ウェルキャブ初となるインライン架装を採用し、価格を抑えつつ、高い利便性を実現しています。初代では、様々なタイプの福祉車両が用意され、2代目では「車いす仕様車（タイプI）助手席側リアシート付」が型式指定自動車となり、登録や車検の手間が軽減されました。

まとめ

ラクティスは、コンパクトなボディながら広い室内空間と優れた経済性を両立した、実用性の高いトールワゴンでした。2代に渡るモデルチェンジを通じて、デザインや機能が進化し、幅広いユーザー層から支持を集めました。 その高い実用性と経済性、そして様々なバリエーションは、多くのユーザーに快適なカーライフを提供したと言えるでしょう。

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