トヨタ・TS030 HYBRID

トヨタ・TS030 HYBRID

トヨタ・TS030 HYBRIDは、トヨタ自動車のモータースポーツ部門が2012年にル・マン24時間レースおよびFIA 世界耐久選手権（WEC）に向けて開発したプロトタイプカーです。このマシンは、トヨタF1チームのバックグラウンドを持つTMG（Toyota Motorsport GmbH）を基に設計されており、名称は1990年代のル・マン参戦車両TS010やTS020の後継機として位置付けられています。

開発と技術

TS030 HYBRIDの最大の特徴は、トヨタのプロトタイプレーシングカーとして初めてハイブリッドシステムを搭載している点です。このハイブリッドシステム「THS-R」（TOYOTA Hybrid System - Racing）は、トヨタの量産車向けのハイブリッド技術を基に開発され、主にトヨタ東富士研究所のモータースポーツ部門と協力して生み出されました。

エンジンには新設計の3.4 L・V8自然吸気ガソリンエンジンが採用されていますが、バッテリーの代わりに日清紡ホールディングスと共同開発した電気二重層キャパシタ（EDLC）が使用されています。このキャパシタはコクピット内に配置されており、エネルギーの回生と駆動を行うモーター・ジェネレーター・ユニット（MGU）がリアギアボックスの内部に搭載されています。初期設計ではフロントにもMGUを装備していましたが、レギュレーションの変更により、後輪だけの回生と力行を行う形に変更されました。

レース活動

TS030 HYBRIDは、2012年シーズンでいくつかの重要なレースに参加しています。初年度のル・マン24時間レースに出場する際、チームはアレクサンダー・ブルツ、ニコラ・ラピエール、中嶋一貴の3名をレギュラードライバーに選出しました。しかし、テストでの事故により出場をキャンセル。その後、WEC第3戦のル・マン24時間レースでは、速さを発揮し一時トップを走行しますが、複数のトラブルによりリタイアしました。

続くWECシリーズの中で、スパ6時間レースにおいてTS030は初の表彰台を獲得。さらにサンパウロ6時間レースでは見事な勝利を収め、20年ぶりのトヨタスポーツカーの世界選手権での優勝となった瞬間は、ファンの間で熱く迎えられました。シーズンを通した結果、3勝を達成し、ドライバーズチャンピオンシップでも高評価を受けました。

2013年シーズンの展望

2013年にはさらに進化したTS030が登場し、フル参戦体制を取りました。改良されたハイブリッドシステムは出力を向上させ、車両デザインも大幅に刷新。前年同様、アレクサンダー・ブルツやニコラ・ラピエールがドライバーを務め、全8戦の競技で富士とバーレーンでの優勝を果たすなど、シーズンを通じて素晴らしいパフォーマンスを見せました。

スペック

• - シャシータイプ: ル・マン・プロトタイプ (LMP1)
• - エンジン: 3.4 L V8自然吸気エンジン
• - ハイブリッドシステム: TOYOTA HYBRID System - Racing (THS-R)

トヨタ・TS030 HYBRIDは、ハイブリッド技術を活用した先進的なプロトタイプカーとして、耐久レースの世界に新たな時代をもたらす存在でした。これによりトヨタはその後のレース活動にも大きな影響を与えることとなりました。

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