トヨペット・マスター

トヨペット・マスター

トヨペット・マスター（Toyopet Master）は、1955年から1956年にかけてトヨタ自動車が生産したタクシー専用のセダン型乗用車です。この車両は主にタクシーとしての利用を目的に開発され、当時のトヨタの商業戦略の一環として位置付けられました。

概要

トヨペット・マスターは、1955年1月1日にトヨペット・スーパーやトヨペット・カストムの後継モデルとして販売が開始されました。トヨタの初代クラウンと同時にリリースされ、クラウンは主に自家用の乗用車として設計されていましたが、マスターはタクシーとしての機能性を重視しました。販売価格は89万5000円で、クラウンよりも約10万円安く設定されていました。

この車両の開発と生産は関東自動車工業によって行われ、厳密にはトヨペット・スーパーRHK型の流れを汲んでいます。サスペンションにはリーフリジッドアクスルが採用されており、耐久性の高い設計がなされていました。そのため、マスターはタクシー業者が求める堅牢性を提供しましたが、同時期に販売されたクラウンの前輪独立懸架がその人気を圧倒したため、マスターの販売台数は振るわない結果となりました。

総生産台数は7403台と予想以上に少なく、1956年11月30日には販売を終了しました。この短命の原因を考慮し、マスターの生産ラインは他の商用車モデルに引き継がれ、部品の流用も行われました。

開発の過程

トヨペット・マスターの開発は、トヨタがクラウンの販売を行う約1年9ヶ月前の1953年10月に開始されました。主査の薮田東三はトラック開発の経験が豊富でしたが、乗用車の担当は初めてでした。一方、クラウンの主査である中村健也とは対照的に、薮田は既存の部品を活用した効率的な開発を得意としました。

関東自動車の技術陣も開発に高い意欲を示し、1954年の初めにはシャシと試作ボディが完成しました。この迅速な開発により、マスターは丸半年で市場にデビューしました。

設計と機能

トヨペット・マスターは、クラウンとは異なる独自の設計がなされていました。多くの部品がクラウンから流用されている一方で、サスペンションなどは保守的なアプローチが取られました。具体的には、前後のサスペンションは5枚板バネリジッドが採用され、乗り心地を向上させるためにスプリングレートが調整されています。

ボディは4ドアセダンの形状で、外装デザインはクラウンとは異なり、より控えめなヨーロピアンスタイルが施されています。ドアの開閉方式やフロントウインドウの形状も特徴的で、タクシーとしての実用性を追求していました。

まとめ

トヨペット・マスターはその短命ながら、トヨタの商業戦略や技術的な挑戦を象徴する存在です。生産ラインや部品の流用によって、多くの後続モデルに影響を与え、トヨタ自動車の発展に寄与しました。

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