トラザメ

トラザメ (Scyliorhinus torazame) の概要

トラザメは、トラザメ科に分類されるサメの一種です。その主な生息地は北西太平洋で、特に日本や朝鮮半島、中国沿岸などの岩礁域に多く見られます。水深320メートルまでの底生環境に適応しており、通常最大で50センチメートルほどの大きさに成長します。形状は細身で、吻は丸みを帯びています。皮膚は粗く、褐色に鞍状の模様が特徴です。このトラザメは、無害であることから飼育が簡単で、水族館などでの繁殖にも適しています。

生態と生活史

トラザメは主に軟体動物を食べ、そのほかに甲殻類や硬骨魚も捕食します。繁殖は卵生で、雌は片側の卵巣と両側の輸卵管を利用し、一度に2個の卵を卵鞘に包んで産みます。卵は黄褐色で、四隅に巻きひげがあり、海藻に固定される際の役割を果たします。

交尾は特異な過程を経て行われ、雄は雌を噛みついて固定し、その後体を巻き付けてクラスパーを挿入します。このクラスパーには数多くの鈎構造が並んでおり、交尾中の固定を助けます。雌は卵鞘の中で精子を数ヶ月間保持し、発育が進みます。卵の孵化には11.3℃の水温では15ヶ月、14.5℃では7～9ヶ月かかると言われています。

若いトラザメは、最初は外鰓を持ち、成長に従い鰭や色素が発達します。水温が低いほど成熟時のサイズが大きくなる傾向があり、そのため、地域によって成長のパターンに違いがあります。このサメの寿命は少なくとも12年に及びます。

生息環境と分布

トラザメの生息地は、北西太平洋の沿岸地域に広がっており、特に日本や南シナ海、さらにはフィリピンにも報告されています。底生でありながら深浅に分布し、外部の環境変化に耐える能力も持っています。回遊はせず、主に固定した場所で生活します。

人との関わり

トラザメは一般の人に対して危害を加えることはなく、そのため家庭の水槽での飼育にも適しています。また、水族館では生育環境に慣れるため、繁殖も行われています。このサメは、その習性や生態から生理学の研究におけるモデル生物としても利用されています。1995年には人工授精の研究に成功した実績もあります。

しかし、トラザメは底生漁業によって混獲されることも多く、西日本では寿命に達してもまだ繁殖能力を持たない個体が報告されています。漁業による圧力は存在しますが、比較的繁殖力が高いため、IUCN（国際自然保護連合）では保全状況を「軽度懸念」と評価しています。

汚染物質の蓄積も報告されており、特に日本各地の採集個体からPCBやDDEなどの有害物質が確認されています。このことは、他の地域の海洋生態系にも影響を与えていると考えられています。

和名と英名

トラザメは英語では「Catshark」と呼ばれますが、注意が必要なのは「Tigershark」との混同です。Tigersharkは別の大型、肉食性のサメを指します。また、Catsharkを直訳した「ネコザメ」は、日本では異なる種を指すため誤解を招くことがあります。

トラザメは小型でおとなしい魚であり、その特性からも飼育しやすい存在として期待されています。

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