トラック野郎・故郷特急便

トラック野郎・故郷特急便：シリーズ最終章の感動とユーモア

『トラック野郎・故郷特急便』は、1979年公開のトラック野郎シリーズ第10作にして最終作であり、シリーズ唯一のダブルヒロインを擁する作品です。菅原文太演じる主人公・星桃次郎（一番星）と愛川欽也演じる相棒・松下金造（やもめのジョナサン）の活躍を中心に、様々な人間模様が織りなす物語は、笑いと感動、そしてちょっぴり切ない余韻を残します。

物語は、桃次郎とジョナサンが高知行きのフェリーで、歌手の小野川結花（石川さゆり）と出会うことから始まります。結花の美しい歌声に魅せられた桃次郎は一目惚れしますが、一方のジョナサンは体調を崩し、脳血栓の疑いがあると診断されます。絶望の淵に立たされたジョナサンは、足摺岬で自殺を図りますが、ウェイトレスの西尾風美子（森下愛子）に救われます。風美子の存在に惹かれる桃次郎でしたが、風美子には亡き母と、行方不明の息子という複雑な事情がありました。

桃次郎は、風美子の母親の看病や、行方不明の息子との再会劇に巻き込まれていきます。風美子の母親は、桃次郎の過去の間違いで壊れてしまった思い出のレコードを心の支えとしていたことが判明し、桃次郎は深い責任を感じます。結花の歌声によって、風美子の母親は安らかに最期を迎えました。

その後、風美子の息子・竜次（原田大二郎）が現れ、父・垣内清馬（大坂志郎）との確執が明らかになります。桃次郎は、キャバレーの経営者・岩瀬（安部徹）とのトラブルや、竜次との激しい争いに巻き込まれ、桂浜での決闘に発展します。闘犬大会での対決を通して、竜次と清馬は和解し、父子間の絆を取り戻すことができました。

一方、結花は海外進出のチャンスが舞い込みます。桃次郎は、誤解から結花が結婚すると勘違いし、悲しみと葛藤を抱えつつも、彼女の夢を応援しようと決意します。最後の最後まで、桃次郎の優しさと仲間たちの絆が、結花の成功を後押しします。

本作は、シリーズを通して描かれてきたデコトラの活躍に加え、土佐の美しい自然や人情あふれる人間模様が、見事なまでに融合されています。笑いと涙、そして人間ドラマが詰まったこの作品は、トラック野郎シリーズの集大成として、多くの観客の心に深く刻まれました。

キャスト

星桃次郎（一番星）：菅原文太
小野川結花：石川さゆり
西尾風美子：森下愛子
垣内竜次：原田大二郎
松下金造（やもめのジョナサン）：愛川欽也
垣内清馬：大坂志郎
岩瀬：安部徹
その他豪華キャスト

スタッフ

監督：鈴木則文
脚本：中島丈博、松島利昭
音楽：木下忠司
主題歌：「一番星ブルース」（菅原文太、愛川欽也）
* 挿入歌：「傷だらけの恋」（石川さゆり）、「南国土佐を後にして」（実質的な挿入歌として使用）

備考

本作は、シリーズ10作目を記念して、ダブルヒロインという華やかな構成が採用されました。また、テレビ映画との併映の影響もあり、興行成績は振るわなかったという裏話も残されています。しかし、その作品性から、現在でも多くのファンに愛され続けている、シリーズの中でも特に人気の高い作品となっています。

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