トラツグミ

トラツグミ（虎鶫）

概要

トラツグミ（学名：Zoothera aurea）は、ツグミ科に属する鳥の一種で、特にその美しい鳴き声と独特の体形が魅力です。この鳥は30cmほどの大きさで、黄褐色の体に黒い斑点が特徴的です。雌雄ともに同じような外観を持ち、環境に応じた優れた適応能力を示します。

形態

トラツグミは体長約30cmでヒヨドリと同じくらいのサイズ感を持っています。全体的には黄褐色から茶色で、特に頭部から腰、翼にかけては黒い鱗状の斑点が密集しています。お腹側は白っぽく、嘴は黒色、脚は肉色をしています。尾羽は14枚もあり、これも他の鳥とは異なる特徴の一つです。

生態

トラツグミは主に、丘陵地や低山にある広葉樹林の中で生活し、公園などの林が多い場所でも観察されることがあります。冬季には寒冷地域に生息する個体が暖かい場所へ移動することもあります。食性は雑食で、特に雑木林の落ち葉をかき分けながら地面を探り、ミミズや昆虫を食べることが一般的です。また、冬の間は木の実も好んで摂取します。繁殖は卵生で、木の枝にコケや枯れ枝からなる巣を作り、4月から7月に3から5個の卵を産む習性があります。

鳴き声

トラツグミのさえずりは、「ヒィー、ヒィー」や「ヒョー、ヒョー」といった独特のメロディで表現され、どこか寂しげな印象を与えます。地鳴きは「ガッ」と短い声で鳴き、主に夜間に活動的ですが、雨の日や曇りの日に日中も鳴くことがあります。

分類

1990年代には分子系統解析の成果によりトラツグミの分類が大きく見直されました。以前はZ. dauma aureaという名称であったが、最近の見解ではZ. daumaから独立した別種であるZ. aureaとされています。一方、オオトラツグミは従来通りZ. daumaの亜種とみなされている見解もあり、双方共にトラツグミとは異なる分類に位置付けられています。

分布

トラツグミは、シベリア東南部や中国東北部、朝鮮半島、日本で繁殖しています。北部地方に生息する個体は、冬になるとインド東部やインドシナ半島、フィリピン地域へと渡り、越冬します。日本では、低山から亜高山帯にかけて広く分布し、夏季には北海道に見られ、本州、四国、九州では留鳥または漂鳥として生活しています。特に奄美群島以南の琉球列島では、冬に飛来する個体も確認されています。

人間との関わり

この鳥の夜に鳴く独特な声は、一部の人々にとっては不気味に感じられることもあります。「鵺鳥」の名は、トラツグミの声に由来し、文学や伝承においても重要な役割を果たしています。伝説の動物である「鵺」は、トラツグミの声にちなんで名付けられ、現在ではこの架空の存在が広く知られています。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、トラツグミは2019年時点で絶滅のリスクが低い種として評価されており、日本の環境省のレッドリストには2015年の最新改訂では掲載されていないことも心強い情報です。

名称

トラツグミには、地方則によって独特の鳴き声に基づく多くの名称があります。漢字表記には「鵺」や「ぬえどり」といった表現が見られます。これらの名称も、トラツグミの独特な生態を反映したものと言えるでしょう。

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