ツグミ科

ツグミ科（Turdidae）の詳細解説

ツグミ科は、スズメ目に分類される鳥類の科であり、世界中の温帯から熱帯にかけて広く分布しています。一般的に「ツグミ」と呼ばれる鳥たちのグループですが、狭義にはTurdus eunomusという学名を持つ種を指します。この科の鳥たちは、その多様な生態と形態で知られています。

特徴

ツグミ科の鳥類は、その生息域の広さと多様性が特徴です。全世界の中低緯度に生息し、様々な環境に適応しています。形態的な特徴としては、後肢が長く、しっかりしていることが挙げられます。これは、彼らが地表で採食することが多い生態を反映しています。

生態

食性は雑食で、昆虫、果実、種子などを食べます。採食は主に地表で行われ、落ち葉の下や土を掘り返して餌を探す姿がよく見られます。

系統と分類

ツグミ科は、ヒタキ科と姉妹群を形成し、これら2科でヒタキ上科の大部分を構成しています。科内は6つの大きな系統に分かれますが、これらの系統関係は完全には解明されておらず、特に基底系統については単系統性も不確実な部分があります。

かつてZoothera属に分類されていた種は、2つの大きな系統に分かれることが判明し、トラツグミ属(Zoothera)とジツグミ属(Geokichla)に分離されました。また、ギンガサンショウクイは、伝統的にサンショウクイ科に分類されていましたが、ミヤマツグミ属との関係性が強いことが明らかになりました。

多くの属がヒタキ科に移された歴史もあります。例えば、「〜ヒタキ」という和名を持つ多くの種や、コマドリ類、シキチョウ類、ルリチョウ類などがそうです。これらの種はヒタキ科内で広範囲に分散しており、系統的にまとまってはいません。

ムラサキツグミとイワトビヒタキも、かつてはヒタキ科に移されましたが、ツグミ科に含める可能性も残されています。一方、ノドボシツグミヒタキとヤマブチツグミヒタキは、スズメ上科のオナガミツスイ科に移されました。

歴史

かつて、Hartert（1910年）は、拡大されたヒタキ科を提唱し、その中にツグミ亜科など多くの亜科を設けていました。その後、これらの亜科はAmadon（1957年）やWetmore（1960年）によって個別の科として扱われるようになりました。現在のツグミ科は、ほぼ当時のツグミ亜科に相当します。

Sibley & Ahlquist（1990年）は、ノビタキ亜科がツグミ亜科よりもヒタキ科に近いと考え、ヒタキ亜科にまとめました。これにより、ノビタキ亜科がツグミ科からヒタキ科に移されました。ただし、ムジヒタキ類やコバネヒタキ類は、ツグミ科に残されました。

しかし、Sangsterら（2010年）によって、ムジヒタキ類、コバネヒタキ類、さらにルリチョウ属やイソヒヨドリ属もヒタキ科に移されました。

属と種

国際鳥類学会議（IOC）の分類に基づき、ツグミ科は18属164種に分類されています。ただし、いくつかの属はSangsterら（2010年）の研究に基づきヒタキ科に移され、また、単系統性を維持するために、トラツグミ属からジツグミ属が分離されました。ツグミ属（Turdus）には、全体の半数近くの種が含まれています。

以下に、主な属と種の一部を示します。

*ジツグミ属 (Geokichla)
ホオジロジツグミ (Geokichla schistacea)
ブルジツグミ (Geokichla dumasi)
セラムジツグミ (Geokichla joiceyi)
クリガシラジツグミ (Geokichla interpres)
エンガノジツグミ (Geokichla leucolaema)
ムナグロジツグミ (Geokichla erythronota)
セアカジツグミ (Geokichla dohertyi)
シロクロジツグミ (Geokichla wardii)
クロボシジツグミ (Geokichla cinerea)
チモールジツグミ (Geokichla peronii)
オレンジジツグミ (Geokichla citrina)
マミジロ (Geokichla sibirica)
アフリカジツグミ (Geokichla gurneyi)
コンゴジツグミ (Geokichla oberlaenderi)
ミミグロジツグミ (Geokichla cameronensis)

*チャツグミ属など (Catharus and allies)
ムナオビツグミ (Ixoreus naevius)
カササギツグミ (Ridgwayia pinicola)
キノドヒトリツグミ (Cichlopsis leucogenys)
ハシグロチャツグミ (Catharus gracilirostris)
アカハシチャツグミ (Catharus aurantiirostris)
ウスグロチャツグミ (Catharus fuscater)
チャボウシツグミ (Catharus frantzii)
ズグロチャツグミ (Catharus mexicanus)
ムナフチャツグミ (Catharus dryas)
ビリーチャツグミ (Catharus fuscescens)
ハイイロチャツグミ (Catharus minimus)
オリーブチャツグミ (Catharus ustulatus)
チャイロコツグミ (Catharus guttatus)
モリツグミ (Hylocichla mustelina)

クロヒトリツグミ属 (Entomodestes)
クロヒトリツグミ (Entomodestes coracinus)
ミミジロクロヒトリツグミ (Entomodestes leucotis)

ミヤマツグミ属‐キンガオサンショウクイ (Cochoa-Chlamydochaera)
ムラサキミヤマツグミ (Cochoa purpurea)
ミドリミヤマツグミ (Cochoa viridis)
キンガオサンショウクイ (Chlamydochaera jefferyi)

*トラツグミ属 (Zoothera)
ムネアカジツグミ (Zoothera everetti)
アミメジツグミ (Zoothera andromedae)
セアカトラツグミ (Zoothera mollissima)
オナガトラツグミ (Zoothera dixoni)
トラツグミ (Zoothera aurea)
オオトラツグミ (Zoothera major)
アカオトラツグミ (Zoothera heinei)
オーストラリアトラツグミ (Zoothera lunulata)

ツグミ属など (Turdus and allies)
ウタツグミモドキ (Psophocichla litsipsirupa)
キアシクロウタドリ (Turdus flavipes)
メジロクロウタドリ (Turdus leucops)
アフリカツグミ (Turdus pelios)
カラアカハラ (Turdus hortulorum)
ヒマラヤハイイロツグミ (Turdus unicolor)
ムナグロアカハラ (Turdus dissimilis)
クロツグミ (Turdus cardis)
クビワツグミ (Turdus torquatus)
ハイバネツグミ (Turdus boulboul)
ニシクロウタドリ (Turdus merula)
タイワンツグミ (Turdus poliocephalus)
クリイロツグミ (Turdus rubrocanus)
マミチャジナイ (Turdus obscurus)
シロハラ (Turdus pallidus)
アカハラ (Turdus chrysolaus)
アカコッコ (Turdus celaenops)
ノドグロツグミ (Turdus ruficollis)
ハチジョウツグミ (Turdus naumanni)
ツグミ (Turdus eunomus)
ノハラツグミ (Turdus pilaris)
ワキアカツグミ (Turdus iliacus)
ウタツグミ (Turdus philomelos)
ヤドリギツグミ (Turdus viscivorus)
オニツグミ (Turdus fuscater)
メガネクロウタドリ (Turdus nigrescens)
ナンベイコマツグミ (Turdus rufiventris)
フォークランドツグミ (Turdus falcklandii)
サメイロツグミ (Turdus leucomelas)
キバラツグミ (Turdus amaurochalinus)
ミヤマクロウタドリ (Turdus plebejus)
ハシグロムジツグミ (Turdus ignobilis)
バフムジツグミ (Turdus grayi)
メガネジツグミ (Turdus nudigenis)
メジロムジツグミ (Turdus jamaicensis)
ノドジロツグミ (Turdus albicollis)
メキシココマツグミ (Turdus rufopalliatus)
アカエリツグミ (Turdus rufitorques)
コマツグミ (Turdus migratorius)
アゴジロツグミ (Turdus aurantius)
オジロツグミ (Turdus plumbeus)

*基底系統 (Root clade)
アリクイツグミ (Neocossyphus rufus)
オジロアリクイツグミ (Neocossyphus poensis)
オジロサビイロヒタキ (Stizorhina finschii)
サビイロヒタキ (Stizorhina fraseri)
ルリツグミ (Sialia sialis)
チャカタルリツグミ (Sialia mexicana)
ムジルリツグミ (Sialia currucoides)
ハエトリツグミ (Myadestes townsendi)
キバシヒトリツグミ (Myadestes ralloides)

系統位置不明
セエレベスヤマツグミ (Geomalia heinrichi)
セレベスツグミ (Cataponera turdoides)

参考文献

小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』、講談社、2000年、199–202頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2000年、201–203頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、185–186頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ5 東南アジアの島々』、講談社、2000年、189–190頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社、2001年、103、215–216頁。
高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、236–251、328–329頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、449–485頁。
『絶滅危惧動物百科6 サイ(スマトラサイ)―セジマミソサザイ』 財団法人自然環境研究センター監訳、朝倉書店、2008年、94–95頁。

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