トラトラトラ

トラトラトラ

「トラトラトラ」は、第二次世界大戦（大東亜戦争）における太平洋戦線の始まりである真珠湾攻撃の開始を知らせるために使用された、日本軍の電信における暗号略号です。その意味は「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味します。

概要

本来はモールス符号「･･―･･　･･･」を繰り返すもので、トラ連送とされました。真珠湾攻撃時には、攻撃隊長である淵田美津雄中佐が搭乗する九七式艦上攻撃機から、第一航空艦隊司令部（旗艦：空母「赤城」）宛に発信されました。

真珠湾攻撃の作戦計画では、奇襲が成功した場合（敵の防御が機能する前に攻撃が可能であると空中指揮官が判断した場合）には、艦上攻撃機（艦攻）による対艦攻撃を優先し、強襲となった場合には、艦上爆撃機（艦爆）による対空防御制圧を優先することになっていました。「ワレ奇襲ニ成功セリ」の電文は、このうち前者の奇襲が成功した状況を示すものでした。したがって、この電文は攻撃が奇襲によって開始されることを示すものであり、攻撃そのものの完全な成功を意味するものではありません。

後に、この電文をタイトルとした、真珠湾攻撃を題材とする映画『トラ・トラ・トラ!』が製作されました。

由来・解釈

当時、第一航空艦隊の航空甲参謀を務めていた源田実によれば、小野寛治郎通信参謀がこの暗号を作成し、11月24日に部隊が集結していた単冠湾で作戦説明が行われた際に、通信計画に関する説明の中で他の隠語とともに示されたとのことです。

航空乙参謀だった吉岡忠一は、ハワイ奇襲攻撃作戦の間だけ使用する通信略語として、自身と小野通信参謀の二人で作成したと述べています。吉岡によると、複数の略語を作成し、「全軍突撃せよ」は「ト」連送（ト・ト・ト…）としました。「我奇襲ニ成功セリ」については、「ト」の次に「ム・ラ・サ・キ」（紫）をつけて「トム」「トラ」「トサ」「トキ」とした四つの略語のうちの「トラ」に、たまたま「奇襲成功」の意味が当てはめられただけで、深い意味はなかったとしています。

しかし、実際に「トラトラトラ」を打電した飛行隊長の淵田美津雄は、作戦説明時に配布された略語暗号書で「奇襲成功」の略電が「トラトラトラ」であることを知り、寅年生まれの自分にとって非常に縁起が良いと喜び、攻撃の成功を確信したと、当時の心境を著書の中で語っています。さらに、旗艦「赤城」宛の「トラトラトラ」の発信が、広島の連合艦隊旗艦「長門」でも直接受信されていたことを後日聞き、千里を往復する虎になぞらえ、感慨を深めていたといいます。

吉岡も、戦後、真珠湾攻撃の研究をまとめた歴史研究家ゴードン・ウィリアム・プランゲから、「あのトラというのはタイガーのことですか」と質問を受けており、「トラ」がたまたま「虎」「寅」と同音であったため、縁起を担いだものであったという様々な俗説が、真珠湾攻撃の成果の語りとともに生まれたとしています。

真珠湾攻撃を受けた側であるアメリカでは、「タイガー・タイガー・タイガー」と訳して「タイガーのように襲いかかる」と解釈されることもありました。また、突撃と雷撃隊の最初の文字を組み合わせて「トラ」としたと述べる米軍関係者もいました。

創作での引用

「トラ・トラ・トラ」の暗号とともに実行された真珠湾攻撃は太平洋戦争の始まりを象徴する出来事であり、しばしば日本の創作物において「奇襲」が行われる場面のパロディとして引用されることがあります。

例えば、「Re：ゼロから始める異世界生活」の三章78話（アニメでは一期24話）では、魔女教大罪司教のペテルギウス・ロマネコンティを討伐するために接触した主人公であるナツキ・スバルが、協力者のフェリスが「トラ・トラ・トラ」と言ったのを合図にペテルギウスを奇襲します。さらに、奇襲が成功した後、スバルが「我、奇襲に成功セリ」と叫ぶ場面があります。

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