トランサム作戦

第二次世界大戦中の1944年5月17日、連合国軍はジャワ島のスラバヤにある日本軍の重要拠点に対し、大規模な航空攻撃「トランサム作戦」を実行しました。これは、アメリカ海軍とイギリス海軍の協同による機動部隊が行った奇襲攻撃であり、日本側の航空機、艦船、そして地上施設に深刻な損害を与えました。

背景

トランサム作戦は、インド洋方面における連合国合同機動部隊による二度にわたる急襲作戦の第二弾として位置づけられます。先行するコックピット作戦に続き実施されました。特にイギリス海軍にとっては、太平洋での将来的な戦いに備え、戦力の再編成と訓練を進める中での、極東地域における航空部隊による初の大規模攻勢となりました。この作戦を通じて得られた経験は、その後のイギリス海軍の作戦遂行に多大な示唆を与えたとされます。

戦闘経過

1944年5月17日の早朝、イギリス海軍の空母「イラストリアス」とアメリカ海軍の空母「サラトガ」を中核とする米英合同機動部隊は、スラバヤに向けた攻撃隊を発艦させました。飛び立った連合軍機は、スラバヤの主要な軍港、飛行場、さらには燃料供給に不可欠な製油所など、戦略上重要な目標に対して精密な爆撃と機銃掃射を敢行しました。日本軍は完全に奇襲を受ける形となり、効果的な戦闘機による迎撃体制をとることができませんでした。実は、作戦のわずか二日前に、スラバヤに駐留していた海軍の通信部隊が、イギリス機動部隊が活動中であるという通信傍受・解析結果を報告していたにも関わらず、この重要な情報が適切に活用されず、奇襲を許す結果となったのです。

結果

この攻撃により、日本軍は広範囲にわたる被害を被りました。陸軍のマラン飛行場では、格納庫が一棟破壊され、航空機17機が炎上しました。海軍飛行場でも、戦闘機2機と陸軍の重爆撃機1機が炎上するなど、航空戦力に被害が出ました。港に停泊していた艦船の被害も甚大で、「第101号掃海特務艇」、「第103号駆潜特務艇」、交通船1隻、そして大発動艇2隻が沈没しました。「第36号哨戒艇」と貨物船「神鈴丸」は大破し、「第108号駆潜特務艇」も浸水による損害を受けました。さらに、燃料供給の要であったウオノコロモ製油所も大きな破壊を受けました。これらの攻撃による日本側の死傷者は約200名に及んだと記録されています。一方、日本側の記録によれば、連合軍の損害は限定的であり、対空砲火によって航空機3機が撃墜され、搭乗員数名が捕虜となった程度でした。

作戦の影響

トランサム作戦で受けた大きな被害は、日本軍の戦略に直接的な影響を及ぼしました。機動部隊による新たな襲来の脅威が高まったと判断した日本軍は、インド洋方面に展開していた航空部隊を、温存を図るため後方へと下げさせる決定を下しました。具体的には、アンダマン諸島のポートブレアにあった陸軍戦闘機部隊（総数7機）は、スマトラ島のパレンバン防衛強化のために撤収しました。海軍の第28航空戦隊も、スマトラ島コタラジャ基地からの哨戒活動を縮小し、その主力をサマランガへと後退させました。元々、インド洋方面における日本軍の航空戦力は手薄であったのですが、この後退により、対潜哨戒用の水上機がわずかに残るのみとなり、同方面における制空・制海能力はさらに低下しました。

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