トランスカイ

トランスカイ共和国：消滅したバントゥースタン

トランスカイ（iRiphabliki yeTranskei）は、かつて南アフリカ共和国に存在したバントゥースタン（自治区）です。現在の東ケープ州東部に位置し、「トランスカイ」とは「カイ川の向こう側」を意味します。

概要

トランスカイは、南アフリカのアパルトヘイト政策の一環として、黒人のための自治区として設立されました。しかし、その実態は、南アフリカ国内の白人と黒人を分離することを目的としたものでした。比較的まとまった面積を有していましたが、肥沃な土地や鉱物資源に乏しく、経済的な自立は困難でした。また、ポート・エドワードやポート・セント・ジョーンズなどの港湾は白人地区に指定されており、独立後も経済的な制約を受け続けました。

政治体制も問題を抱えていました。国会議員の定員150人のうち、半数が政府が指名した族長などから構成されており、旧態的かつ封建的な勢力が温存されていました。

歴史

1959年: 南アフリカ国民党政府が、民族ごとの開発を目指し、民族・言語的に特有の10個のバントゥースタン設立法案を提案。トランスカイとシスカイがコサ語地域として提案されました。
1963年: トランスカイ・バントゥースタンが南アフリカ議会で承認され、正式に自治区となりました。カイザー・マタンジマが実権を掌握し、独裁的な支配を行いました。
1976年: トランスカイ共和国として独立を宣言。首都はウムタタに置かれました。しかし、独立国として承認したのは南アフリカのみでした。
1978年: マタンジマは領土問題を理由に南アフリカとの国交断絶を表明しましたが、経済的援助に依存していたため撤回しました。
1980年: マタンジマはテンブー族の王を追放し、王はザンビアへ亡命しました。
1986年: マタンジマの汚職が発覚し、辞任に追い込まれました。
1987年: トランスカイ国防軍のバントゥー・ホロミサ少将によるクーデターが発生。その後、アフリカ民族会議（ANC）に加盟し連携し、ANCの活動にとって比較的安全な地域となりました。
1994年: 南アフリカとの合意に基づき、トランスカイは南アフリカに再編入されました。

トランスカイの遺産

トランスカイの歴史は、アパルトヘイト政策の負の遺産を象徴するものです。経済的、政治的に自立することができず、南アフリカに再編入されるという結末を迎えました。しかし、トランスカイの存在は、アパルトヘイトの不当性を訴え、南アフリカの民主化を求める人々の戦いを後押しする一因となりました。

関連項目

* バントゥースタン

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