トランテックス

株式会社トランテックス

株式会社トランテックスは、日本の石川県白山市に本社を置く、トラックボデーの製造を専業とする企業です。国内を代表する自動車メーカーである日野自動車株式会社の全額出資子会社として、日野自動車グループの一翼を担っています。主にトラックの荷台やトレーラー車体の設計・製造を手がけており、高度な技術力と品質管理で、日本の貨物輸送を支える多様な輸送用車両を提供しています。

同社の設立は、2002年10月1日に行われた会社分割に遡ります。前身である日野車体工業株式会社が事業を分割する際に、トラックボデー製造部門を承継する形で新たに設立され、株式会社トランテックスとして商号変更しました。日野車体工業の歴史はさらに古く、1908年の創業者の個人事業に始まり、脇田自動車工業株式会社を経て、1938年には帝国自動車工業株式会社となりました。一方、石川県金沢市には1942年に金澤航空工業株式会社が設立され、金澤産業、金産自動車工業と商号を変更しました。この帝国自動車工業と金産自動車工業が1975年4月に合併し、日野車体工業株式会社が誕生しました。トランテックスは、この歴史ある日野車体工業のトラックボデー事業の流れを汲んでいます。なお、会社分割の際にバスボデー製造事業はジェイ・バス株式会社へ承継されています。

事業内容としては、トラックの荷台やトレーラーの車体製造が中心です。かつて日野車体工業であった時代から、日野自動車製のシャーシだけでなく、他メーカーのシャーシにも架装を行ってきましたが、トランテックスとなってからは、その活動をさらに積極的に展開しています。これにより、幅広いニーズに対応可能な製品ラインナップを実現しています。

「トランテックス」という社名には、輸送（TRANSPORT）、技術（TECHNOLOGY）、空間（SPACE）、システム（SYSTEM）、そして提供する企業（SUPPLIER）といった言葉の要素が込められています。これは、高い技術をもって質の高い輸送用車両を提供し続けるという、同社の理念を象徴しています。

製品ラインナップは多岐にわたります。代表的なシリーズとしては、平ボディー車の「Hi Block（ハイブロック）」、ドライバンや冷凍車の「Hi Star（ハイスター）」、ウイング車の「Hi Wing（ハイウイング）」などがあります。これらの主力製品に加え、特殊車両である馬運車なども製造しています。

近年では、日野自動車との連携をさらに強化しています。2022年1月6日には、日野自動車の古河工場内に新たな製造拠点として古河工場を開設しました。この新工場は、日野自動車の主要モデルである日野・プロフィアおよび日野・レンジャーの「VQシリーズ」（メーカー完成車）において、シャーシ製造からトラックボデー架装までの一貫生産体制を構築することを目的としています。これにより、これまで必要だったキャブ付きシャーシの本社工場への陸送が不要となり、VQシリーズの納期大幅短縮が見込まれています。また、この一貫生産体制によって、プロフィアとレンジャーの主要なウイングバンバリエーションの約7割をVQシリーズでカバーできるようになるとしています。当初はレンジャーのVQウイングバンの生産から始まりましたが、将来的にはプロフィアのVQウイングバン生産も古河工場へ集約される計画です。

事業拠点は、石川県白山市にある本社・工場を中心に、茨城県古河市に古河工場を置いています。営業体制は全国をカバーしており、北陸（本社内）、北海道（札幌市）、東北（仙台市）、東京（東京都港区）、東海（愛知県豊田市）、関西（大阪市）、九州（福岡県糟屋郡古賀町）に営業所を設けているほか、サービス拠点としてサービス関東事務所（神奈川県相模原市）も展開しています。

過去には、三井鉱山との合弁事業により「サンボデー」という車体ブランドも存在していました。これは筑豊や北海道の炭鉱閉鎖に伴う離職者の再雇用を目的に設立されたものでしたが、その後、九州の工場はトランテックスの全額出資となり、北海道の工場は閉鎖されています。

トランテックスは、長年にわたるトラックボデー製造の歴史と技術を受け継ぎ、日野自動車グループの一員として、日本の物流システムの基盤を支え続ける重要な役割を担っています。

関連項目
日野車体工業
日野自動車
* ジェイ・バス

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