トリエステ自由地域

トリエステ自由地域について

トリエステ自由地域（Territorio libero di Trieste）は、イタリアとユーゴスラビアの境界に位置する特異な地域であり、その設立は1947年にさかのぼります。第二次世界大戦後、トリエステは戦略的に重要な位置にあり、その帰属問題が解決されないまま棚上げされることになりました。この地域は、北部にトリエステ市を含むA地区と、イストリア半島の一部を含む南部のB地区から構成されていました。

歴史的背景

1945年5月1日、ユーゴスラビア軍がトリエステに攻め入り、翌日にはイギリス陸軍が到着しました。ドイツ軍はイギリス陸軍に降伏し、トリエステは一時的に占領されることになりました。その後、6月12日にはユーゴスラビア軍が市内から撤退し、A地区はイギリス軍、B地区はユーゴスラビア軍の占領下に置かれました。

その後、さまざまな国際交渉を経て、1947年1月10日に国際連合安全保障理事会決議16が採択され、トリエステ自由地域の設置が承認されました。1947年2月10日には連合国とイタリアの間で平和条約が締結され、この新しい地域が公式に誕生することとなりました。

地域の構造

トリエステ自由地域は、A地区（面積222.5km²、人口約26万2406人）とB地区（面積515.5km²、人口約7万1000人）に分かれました。各地区はそれぞれ異なる軍隊によって統治されたものの、地域の分断は次第に深刻化する一方でした。特にB地区では、イタリア系住民の多くがA地区またはイタリア本国に逃れ、最終的に残った住民は約1万4000人となりました。

1954年には、新たにイタリアとユーゴスラビアの間で協定が結ばれ、A地区の統治がイタリアに、B地区がユーゴスラビアに委ねられました。さらに1975年にオージモ条約が締結され、正式に地域が分割されました。この時、旧B地区はさらにドラゴニャ川を境に分割され、スロベニア社会主義共和国とクロアチア社会主義共和国にそれぞれ帰属することになりました。

現代の状況

1991年から1992年にかけて、スロベニアとクロアチアはそれぞれ独立を果たし、新たに入出国管理が行われました。この結果、地域内の通貨や管理が異なる状況がさらに進行しました。また、ピラン湾やドラゴニャ川下流域における領有権問題も浮上し、スロベニアが領有権を主張する地域にクロアチアが実効支配を行っているため、争いが続いています。

2011年には両国がハーグの常設仲裁裁判所への仲裁依頼を行いましたが、2015年に不正が発覚し、クロアチアは依頼を取り下げました。その後も仲裁手続きは続行され、一部の評決がスロベニアに有利な内容で下されましたが、クロアチアはその履行を拒否しています。

このようにトリエステ自由地域は、歴史的な背景に根ざす分断の象徴であり、現在の地域状況も依然として影響を受けています。ただし、2023年までにこの地域の国々は、シェンゲン圏やユーロ圏に加入しつつあり、過去の分断からの脱却を目指す動きが見られます。

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