トリエステ＝オピチナ・トラム

トリエステ＝オピチナ・トラム：歴史と技術が織りなすユニークな交通システム

トリエステ＝オピチナ・トラムは、イタリア北東部の都市トリエステで、市中心部と郊外のオピチナ地区を結ぶ、歴史と技術が融合したユニークな路面電車です。1902年の開業以来、この路線は、急峻な地形に対応するため、路面電車とケーブルカーの組み合わせという珍しい運行形態を採用し、地域の重要な交通手段として活躍してきました。しかし、2016年の事故により現在は運休しており、復旧に向けての取り組みが進められています。

歴史的背景と路線開設

19世紀後半、オーストリア南部鉄道がトリエステまで延伸したものの、オピチナ地区からの標高差を克服するために大幅な迂回を強いられていました。そこで、オピチナ地区とトリエステ市街地を最短距離で結ぶ交通手段として、トリエステ＝オピチナ・トラムの建設が計画されました。1902年に一部がラック式鉄道として開業し、その後、1906年にはオーストリア南部鉄道のオピチナ駅まで延伸しました。1928年には、ラック式鉄道部分がケーブルカー方式に変更され、より効率的な運行が実現しました。

1938年にはオピチナ停留所とオピチナ駅間の路線が廃止されましたが、1961年には運営主体が私鉄からトリエステ市当局に移管され、公営鉄道としての新たなスタートを切りました。しかし、2016年8月14日、コンコネッロ停留所付近で発生した正面衝突事故により、8名の負傷者を出す事態となり、以降、この路線は運休を余儀なくされています。事故車両が古いこともあり、修理に必要な部品の調達が難航しており、復旧作業は長期化しています。

運行ルートと技術的特徴

トリエステ＝オピチナ・トラムは、市街地のオベルダン広場（標高3m）からオピチナ地区（標高329m）を結ぶ単線路線です。全長は不明ですが、その運行ルートにはいくつかの特徴的な区間があります。

併用軌道区間： オベルダン広場停留所からスコルコラ広場停留所までの約400mは、道路上を他の車両と並走する併用軌道です。
ケーブルカー区間： スコルコラ広場停留所からヴェッタ・スコルコラ停留所までの約800mは、専用のケーブルカーによってトラム車両が押し上げられる急勾配区間です。この区間では、標高差160m、最大勾配260パーミルという急な坂を登ります。
専用軌道区間： ヴェッタ・スコルコラ停留所から終点のヴィッラ・オピチナ停留所までは、主に専用軌道を使用します。

この路線には、単線区間における列車の行き違いを可能にするため、4箇所に列車交換施設が設けられており、うち1箇所はケーブルカー区間に存在します。

車両とケーブルカー

トラム車両は、1935年から1942年にかけて製造されたものが現存しており、そのスペックは以下の通りです。

車体長: 13,370mm
車体幅: 2,500mm
車体高: 4,800mm (パンタグラフ折りたたみ時 3,450mm)
固定軸距: 1,820mm
自重: 17,000kg
主電動機: GDTM 1252型 550V 4P 25kW × 4台
製造者: Officine Meccaniche della Stanga (機械部), Tecnomasio Italiano Brown Boveri (電気部)

ケーブルカーは、「carro scudo」と呼ばれるユニットが使用され、トラム車両の坂の下側に連結されます。この連結は、ケーブルカーの重力でトラムが押さえつけられているだけで、物理的な連結器は使用されていません。2台のケーブルカーユニットはケーブルで結合されており、交走式で運行されます。ケーブルカー区間の分岐器には、アプトスイッチではなく、トラム車両とケーブルカーユニットの両方が通過できる鈍端ポイントが採用されています。

運行情報

通常、トリエステ＝オピチナ・トラムは、1時間に3本（20分間隔）で運行されており、始発駅から終点までの所要時間は約30分です。2015年時点での運賃は1.35ユーロでした。しかし、2016年以降は運休が続いており、復旧の見通しは不透明です。

このトリエステ＝オピチナ・トラムは、技術的な特徴と歴史的な背景から、世界的にも珍しい交通システムとして、多くの人々に愛されてきました。その独特な魅力が再び人々に届けられる日が来ることを願っています。

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