トリップドットコム・グループ

トリップドットコム・グループとは

トリップドットコム・グループ（Trip.com Group Ltd.）は、中国・上海に本社を置くオンライン旅行会社（OTA）です。ナスダックと香港証券取引所に上場しており、世界中で旅行予約サイト「Trip.com」を展開しています。また、旅行メタサーチの「スカイスキャナー」を傘下に持ち、中国国内向けには「Ctrip（携程）」と「Qunar（去哪儿）」という旅行予約サイトを運営しています。

沿革

トリップドットコム・グループは、中国のOTAとして最大手です。中国だけでなく、日本、アメリカ、イギリスなど世界13カ国に現地オフィスを構え、地域ごとに最適化された23のウェブサイトとアプリを提供しています。

1999年、オラクルに勤務していたエンジニアの梁建章（ジェームス・リャン）氏を中心に、范敏氏、季琦氏、沈南鵬（ニール・シェン）氏の4名によって、Ctrip（シートリップ）として共同設立されました。シリコンバレーの動向に精通したメンバーが中心となり、当初は旅行口コミサイトとしてスタートしましたが、すぐにホテル予約の代理販売に事業を拡大しました。

創業当初、中国ではインターネット利用がまだ一般的ではなかったため、コールセンターでの予約が主流でした。当時、中国の旅行市場では、旅行会社での手続きが煩雑でしたが、トリップドットコム・グループは空港や駅などの交通拠点に自社カードを配布し、認知度を高めました。ホテル予約では、当初は料金をホテルが徴収するエージェンシーモデルを採用していましたが、中国工商銀行との合弁事業を通じてクレジットカード決済システムを構築し、航空券予約（料金OTA決済）にも進出しました。

設立から約4年間は私企業として運営されていましたが、2003年にNASDAQに上場し、公開会社となりました。2000年代前半には、中国国内で多くのOTAが設立されましたが、大半は中国市場に不慣れな投資家の資金によって運営されていたため、その後の経済危機やSARSの流行を経て淘汰されました。トリップドットコム・グループは、アメリカの動向を参考に効率化と技術投資を継続することで、市場シェアを拡大しました。現在は、スマートフォンの普及に伴い、アプリとウェブサイトを中心とした事業展開を行っています。

2019年の売上高は51.22億米ドル（OTAグループとして世界3位）で、世界1位のブッキング・ホールディングスの3割強でした。分野別の比率は、航空券や鉄道などのチケット予約が39％、宿泊予約が38％、パッケージ商品が13％となっています。

2004年から2007年の間、楽天がシートリップの株式を取得し、持分法適用関連会社となっていました。その後、2014年にプライスライン・グループ（現：ブッキング・ホールディングス）が少数株式を取得しました。2015年10月には、中国の検索最大手である百度が、傘下の旅行検索サイトQunarの株式をシートリップに売却するとともに、シートリップの株式を取得し、最大株主となりました。民泊事業に関しては、中国の民泊プラットフォーム「途家」に出資していましたが、2015年に出資を停止し、2016年10月に民泊事業を途家に売却しました。また、2016年1月には、インド最大のOTAであるメイクマイトリップの少数株式を取得し、2019年4月には49％の株式を保有するに至りました。2016年11月には、CEOが創業者の梁建章氏から、元アプライド・マテリアルズ勤務の孫潔（ジェーン・ジェ・サン）氏に交代しました。

近年では、中国国外への旅行需要の拡大に対応するため、2016年4月に中国東方航空の持株会社であるチャイナイースタンエアホールディングカンパニーに約513億円を出資しました。また、2016年11月には旅行メタサーチのスカイスキャナーを買収し、12月に完了しました。2017年11月には、アメリカの旅行サイト「Trip.com」を買収し、旧Trip.comをスカイスキャナー傘下とし「Trip by Skyscanner」に名称変更しました。一方、グローバル展開のために、中国国外でのシートリップのサービスは、「Trip.com」のドメインに移行しました。2019年11月には、統括企業名をTrip.com Group Ltd.に変更しました。

日本におけるトリップドットコム・グループ

2012年にCtripの日本語ウェブサイトが開設されましたが、2017年11月以降にTrip.comへの移行が開始され、2018年に完了しました。現在では、日本語サービスはTrip.comのブランド名で、航空券、ホテル、鉄道の予約サービスを提供しています。

日本法人である「株式会社Trip.com Japan」は、2014年5月に設立され、東京（大手町、田町）、大阪（心斎橋筋）など国内8カ所にオフィスを構えています。2015年には日本旅行業協会（JATA）の正会員になりました。その他にも、ホテル・旅館の仕入れ販売会社「Trip.com International Travel Japan」、航空券の仕入れ販売会社「Trip.com Air Ticketing Japan」を運営しています。

中国語サイトのCtrip（携程）は、訪日中国人の半数が利用しているとされ、鉄道ではジャパンレールパスなどの割引乗車券やSuicaの購入が可能です。また、ホテルに関しては「中国人に優しい」レベルを示す「華」マークを付与するなど、中国人に向けた情報提供を行っています。レストラン予約では、2015年8月に一休、2017年にぐるなびと提携し、Ctripから各社のプランを予約できるサービスを開始しました。2017年7月には、大阪府への訪日中国人の増加を目的に、大阪観光局と連携協定を締結しました。2019年4月にはJR東日本、同年10月にはJR九州とそれぞれ訪日外国人誘致に向けて提携を結んでいます。

まとめ

トリップドットコム・グループは、中国を代表するオンライン旅行会社として、世界中でサービスを展開しています。技術革新と市場の変化に対応しながら、グローバルな旅行市場での地位を確立しています。日本においても、Trip.comブランドでサービスを提供し、訪日外国人観光客の誘致に貢献しています。

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