トルコジョッキークラブ

トルコジョッキークラブ：トルコ競馬の中枢を担う機関

トルコジョッキークラブ（Türkiye Jokey Kulübü, TJK）は、トルコ共和国における競馬の統括機関として、その発展に大きく貢献している団体です。1950年、馬主、騎手、政治家、そして退役軍人といった多様なメンバーによって設立されました。設立の背景には、トルコ共和国建国後、個人による競馬開催が主流であった状況への課題意識がありました。個々の開催では運営の非効率や不正リスクといった問題点が指摘されており、より公平で発展的な競馬運営の必要性が高まっていたのです。

1953年に制定されたトルコ競馬法に基づき、TJKは政府から競馬開催の権限を委任されました。これにより、TJKは協会（社団法人）としての法的基盤を確立し、「トルコジョッキークラブ協会（Türkiye Jokey Kulübü Derneği）」として正式に活動を開始しました。農業森林省の監督下で運営され、その目的は競馬の実施、そして競馬、競走馬の生産・育成の発展のための施策の実行と定義されています。

TJKの運営は、会員総会によって選出された理事長と6名の理事からなる7名体制の理事会によって行われています。理事会メンバーは、競走馬生産・所有を手がける実業家らが中心を占めており、政府代表は含まれていません。この構成は、TJKが民間主導で運営されていることを示しています。

沿革：黎明期から現代までの歩み

TJK設立以前、トルコにおける競馬は、1926年に設立された高等競走改良委員会によって統括されていました。しかし、行政主導の体制では、小規模な主催者による競馬運営に課題が残りました。こうした問題を解決すべく、生産者や馬主を中心に1943年には競走馬生産者馬主協会が設立されました。同協会は1947年までイスタンブールで競馬を開催しましたが、より組織的な運営体制の構築が求められました。

1948年には高等競走改良委員会が廃止され、代わりに臨時競馬委員会が設置されました。この機を捉え、民間団体としてジョッキークラブの設立準備が本格化します。そして、1950年11月、ジェラル・バヤル大統領とアドナン・メンデレス首相の承認を得て、TJKが正式に設立されました。1951年4月には首都アンカラに本部が設置され、1953年には公益団体の承認を受け、名称をトルコジョッキークラブに改称しました。同年、競馬法が成立し、TJKは政府から競馬開催の権限を正式に委任されたのです。同年9月、TJKは最初の競走を開催し、近代的なトルコ競馬の幕開けを告げました。1986年には、本部をアンカラからイスタンブールに移転しました。

競馬開催と馬券販売：国内外に広がるネットワーク

現在、TJKはトルコ全国10都市の主要競馬場で、サラブレッドとアラブ（純血アラブ）の平地競走を毎日開催しています。1日2つの競馬場で開催されることが多く、場合によっては1つまたは3つの競馬場での開催もあります。

馬券販売は、国内の競馬場だけでなく、欧州、北米、南アフリカ、オセアニア、香港、シンガポールなど、世界各国の競馬場の競走にも及んでいます。国際的なサイマル（場外）発売はほぼ毎日行われ、競馬場だけでなく、市中にも2000か所以上もの場外馬券売場が設置されています。さらに、インターネット馬券発売も導入されており、現代的な販売網を構築しています。

競走馬繁殖事業：優れた血統馬の育成

TJKは競走馬の繁殖事業にも積極的に取り組んでいます。全国各地に牧場を開設し、サラブレッドと純血アラブの繁殖を促進しています。優れた種牡馬を供給し、科学的な手法を取り入れることで、健康で生産性の高い仔馬の育成を目指しています。

特にサラブレッドについては、TJKが自ら外国から種牡馬を輸入し、低廉な種付け料で提供しています。アメリカから輸入したヴィクトリーギャロップは、その産駒の通算勝利数と獲得賞金額で歴代1位を記録するなど、大きな成功を収めています。日本産種牡馬の導入にも成功しており、ディヴァインライト、ヴィクトワールピサ、クルーガー、サトノアレスなどが導入されています。これらの種牡馬は、トルコ競馬界に大きな影響を与えています。TJKが所有・預託する種牡馬を繋養する牧場は、英語圏の競馬メディアでは「Turkish National Stud」と呼ばれ、日本の競馬メディアでは「トルコナショナルスタッド」と訳されることもあります。

施設：競馬場と牧場

TJKは全国10都市に競馬場を所有・運営しています。また、競走馬の繁殖を支援するため、2つの繁殖馬預託牧場と5つの種馬場を運営しています。繁殖馬預託牧場は、競走馬生産者から繁殖牝馬の預託を受け入れ、管理する施設です。種馬場では、種牡馬との交配を行うサービスを提供しています。これらの施設は、トルコ競馬の発展に欠かせない重要なインフラとなっています。

TJKは、エクレム・クルト見習騎手教育センターも運営しており、将来の騎手育成にも力を入れています。このセンターは、1986年に開設され、1998年には名騎手エクレム・クルトを記念して改称されました。2年間の全寮制の研修を通して、見習騎手免許取得のための教育を行っています。

このように、TJKは競馬開催から競走馬の繁殖、騎手育成まで、トルコ競馬のあらゆる側面を担う重要な機関であり、その活動はトルコ競馬の発展に大きく貢献しています。

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