トレイシー・スマザーズ

トレイシー・スマザーズ：変幻自在のプロレスラー

トレイシー・スマザーズ（Tracy Smothers、1962年9月2日 - 2020年10月28日）は、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ出身のプロレスラーです。テネシー州ナッシュビルを拠点に活動し、その多彩なスタイルで観客を魅了しました。

若手時代の輝きと変貌

デビュー当初は、アイドル的なベビーフェイスとして人気を博しました。しかし、キャリアを重ねるにつれて、ハードコア・レスリングにも対応できる技巧派ヒールへと変貌を遂げます。この変化こそが、彼のプロレスラーとしての幅広さを示すものでしょう。また、トレーナーとしても才能を発揮し、後進の育成にも尽力しました。

サザン・ボーイズとしての躍進と新日本プロレス参戦

1982年にデビュー後、ファビュラス・ワンズの指導を受け、地元メンフィスのCWAで活動。1987年にはスティーブ・アームストロングと「サザン・ボーイズ」を結成し、南部を主戦場に活躍しました。1988年7月には新日本プロレスに初来日。その軽快な空中殺法とフレッシュなファイトスタイルは、日本のファンにも高く評価されました。同年11月には、ジョージ高野とのトリオで6人タッグ・リーグ戦にも参加。1989年4月にはアントニオ猪木とのシングルマッチも実現しています。

WCWでの成功とスモーキー・マウンテンでの活躍

1990年、チーム名を「ヤング・ピストルズ」と改めWCWに進出。ミッドナイト・エクスプレスやファビュラス・フリーバーズといった強豪チームと激しい抗争を繰り広げました。1991年11月にはUSタッグ王座を獲得し、その実力を証明しました。アームストロングとのコンビ解消後は、スモーキー・マウンテン・レスリング（SMW）に参戦。「The Wild Eyed Southern Boy」のニックネームで、プライムタイム・ブライアン・リーやクリス・キャンディードと対戦しました。

日本での多様な活動

1993年にはジェイソン・ザ・テリブルの偽者としてW★INGプロモーションに来日。同年11月には、リチャード・スリンガーとのタッグで全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦に出場しました。1995年にはIWAジャパンに来日し、カクタス・ジャックとのコンビで世界タッグ王座を獲得。その活躍は日本でも広く知られています。

WWF/E、ECWでの変身

アメリカではUSWAを主戦場とし、1996年にはイスラム系のヒール、シャキール・アリに変身。ネーション・オブ・ドミネーションに加入します。その後、WWF（現WWE）にも出場しますが、フレディ・ジョー・フロイドとしてベビーフェイスに戻り、ジョバーとしての役割を担いました。1997年、リングネームをトレイシー・スマザーズに戻し、ECWに登場。「The Main Man」のニックネームで、フル・ブラッデッド・イタリアンズに加入し、再びヒールとして活躍。リトル・グイドーとのタッグでECW世界タッグ王座も獲得しました。

インディー団体での活躍と晩年

ECW退団後は、FMW、XPW、IWAミッドサウスなど、数々のインディー団体を転戦。2005年にはECWリユニオン・イベントにも参加しました。2017年には佐藤淳一レフェリーの引退記念興行で9年ぶりに来日。晩年は悪性リンパ腫と闘いながらも、プロレスへの情熱を失うことはありませんでした。2020年10月28日、58歳で逝去。

得意技と獲得タイトル

テネシー・ジョー・ジャッカー（フライング・エルボー・バット）
サザン・キック（フライング・ニール・キック）
スパインバスター
パンプハンドル・スラム
* ベースボール・スライド・キック

数々のタイトルを獲得し、その実績をプロレス史に刻みました。

多様な人間関係

女子プロレスラーのミッキー・ナックルズが、彼の隠し子という設定で活動していましたが、実際には血縁関係はありません。また、ノラ・グリーンウォルド、クリス・ヒーロー、ブライアン・ダニエルソンなど、多くのレスラーを育成しました。

トレイシー・スマザーズは、その変幻自在なスタイルとプロレスへの情熱で、多くのファンを魅了し続けました。彼の功績は、これからもプロレス史に語り継がれることでしょう。

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