トレイシー・ハイド

トレイシー・ハイド（Tracy Hyde）は、1959年5月16日生まれ、イギリス出身の元女優、元子役です。彼女は特に、1971年の映画『小さな恋のメロディ』（原題：Melody）において、ヒロインであるメロディ・パーキンス役を演じたことで広く知られています。

キャリアの始まりは、8歳から習っていたバレエと、雑誌のキッズモデルとしての活動でした。その可愛らしい姿が、映画監督で脚本家のアンドリュー・バーキン（女優ジェーン・バーキンの兄）の目に留まり、彼はトレイシーに『小さな恋のメロディ』のオーディションを受けるよう強く勧めました。このオーディションを経て、トレイシーは見事に主役のメロディ役を射止めることとなります。

『小さな恋のメロディ』の公開後、彼女はイギリス国内でBBC制作のテレビシリーズなど、いくつかの作品に出演しました。日本でもその人気は高く、1972年には俳優の沖雅也を相手役に迎えた映画企画が持ち上がりました。しかし、トレイシー自身が学業を優先したいと希望したため、この時期に女優業を一時的に休止します。学業を続け、秘書養成学校を卒業した後は、法律事務所で秘書として勤務するという、芸能界とは異なる道に進みました。

女優業を休業している間も、日本における彼女の人気は衰えることがありませんでした。カレンダーが発売されたり、映画雑誌『ロードショー (Roadshow)』が実施する「お気に入り女優」ランキングで常に上位に位置するなど、日本のファンの熱烈な支持が続きました。こうした日本のファンからの要望に応える形で、1977年には『ロードショー』誌の招きにより来日を果たし、日本のファンとの交流を持ちました。

1980年代に入ると、トレイシーは再び女優としての活動を再開し、いくつかの映画やテレビドラマに出演します。特に、1982年の映画『アリス (Alice)』では、『小さな恋のメロディ』で共演したジャック・ワイルドと再び顔を合わせました。しかし、1988年頃にイギリスのテレビ番組『ザ・ビル (The Bill)』に出演したのを最後に、再び女優のキャリアから身を引いたとされています。

その後も、日本のメディアは彼女の動向に関心を持ち続けました。1994年には日本のバラエティ番組が彼女の消息を探し当て、レポーターを派遣して『小さな恋のメロディ』で主演を務めたマーク・レスターとの再会をプロデュースしました。また、1999年にも別の日本のテレビ番組で、マーク・レスターと共に近況が紹介される機会がありました。

私生活については、結婚して3人の子供をもうけ、フランス北部ノルマンディ地方の広大な牧場で暮らしていた時期があると伝えられています。再婚後はロンドンに戻り、家族経営でケネルショップ（犬関連用品店など）を営んでいたと述べていた時期もあります。しかし、2022年に日本を訪れた際のインタビューでは、フランス南西部の有名なコニャック生産地域に居住していること、かつて1年間コニャック工場で働いた経験があること、馬を飼育していること、そして母親と子供たちが暮らすロンドンと頻繁に行き来していることなど、より詳細な近況が語られています。

2022年秋、2021年に迎えた『小さな恋のメロディ』の日本公開50周年を記念し、コロナ禍の影響で1年延期されていた特別上映イベントに合わせて、トレイシー・ハイドはマーク・レスターと共に日本を訪れました。2022年10月15日から30日にかけて、京都みなみ会館、横浜シネマノヴェチェント、そして10月25日にはヒューマントラストシネマ渋谷といった各会場で、映画の上映とともにイベントが開催されました。これらの機会に、彼女は舞台挨拶に登壇したほか、サイン会や撮影会、さらには日本のファンとの懇親会に参加するなど、長年にわたり応援し続けてくれた日本のファンとの直接的な交流を深く楽しみました。

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