トレイルブレイザー (モノレール)

トレイルブレイザー（Trailblazer）は、かつてアメリカ合衆国テキサス州ダラスにあるフェア・パーク内で、1956年から1964年まで運行された珍しい懸垂式のモノレールシステムです。特筆すべきは、これがアメリカで初めて商業運行されたモノレールシステムだった点です。

歴史

このモノレールは、将来の交通手段の可能性を探る実証プロジェクトとして、モノレール社によって開発されました。始まりは1956年、ヒューストンのアロウヘッド・パークに「スカイウェイ・ライン」という短いテストシステムが建設されたことです。同じ年、モノレール社はダラスで開催されるテキサス州ステート・フェアでの展開を目指し、州の見本市側と契約を締結しました。当初はオートモービル・ビルディングからペンシルベニア・アベニューまで、コットン・ボウル広場に中間駅を設ける全長約1,200メートル（4,000フィート）の比較的長い路線が構想されましたが、最終的にはコットン・ボウルを終点とする約490メートル（1,600フィート）へと短縮されて実現しました。

システム全体の資金提供と建設はモノレール社が行い、実際の営業運行はテキサス・スカイウェイズ社が担当しました。これがアメリカ本土で初めての商業運行モノレール線となったのです。興味深いことに、運行に必要な車両を含む大部分の資材は、先にヒューストンで構築されたテストシステムから再利用されました。システムは1956年のテキサス州ステート・フェアの開幕に合わせて間に合い、乗車料金は25セントで開業しました。フェアの来場者の間で瞬く間に人気を集め、主要なアトラクションの一つとなりました。また、トレイルブレイザーは1962年に公開されたミュージカル映画『ステート・フェア』にも登場しており、フェア・パークで撮影されたシーンで見ることができます。

運行と特徴

「トレイルブレイザー」と名付けられたモノレール車両は、定員51名で、ライトブルーのグラスウールで製造されていました。動力源としては、2台のパッカード352ガソリンエンジンが搭載されていました。運行は、2つある台車（ボギー）のうち一方の運転室に座るドライバー1名を含む、合計2名の乗務員で行われました。システムを支える構造は独特で、約30メートル（100フィート）間隔で設置された、高さ9.1メートル（30フィート）の逆J字型の鉄塔によって軌道が吊り下げられていました。

懸垂式の車両は、地上約5.5メートル（18フィート）の高さを空気タイヤで走行しました。設計上の最高速度は時速16キロメートル（10mph）でしたが、フェア・パーク内の短い駅間距離では十分に加速できず、実際の運行速度は制限されていました。約490メートルの路線は、コットン・ボウルとフェア・パークのオートモービル・ビルディング間を結んでおり、片道約2分間の短い移動でした。コットン・ボウル駅は放物線状のアーチによって軌道ごと吊り下げられた構造でしたが、オートモービル・ビルディング側のターミナルは地上に設置されていました。

トレイルブレイザーは、主にテキサス州ステート・フェアの期間中、および年間の週末に運行されました。このシステムは、ダラス市とモノレール社にとって、当時の最先端を行く輸送技術のショーケースとしての役割を果たし、世界各地から都市計画担当者や行政リーダーたちの注目を集めました。運行開始から約30ヶ月で累計5万人の乗客を運び、その短い運行期間全体を通して100万人を超える人々が乗車しました。運行中の出来事としては、1958年4月に小さな火災が発生し、車両からの避難が必要となりましたが、乗客6名と乗務員2名はいずれも無傷でした。

終焉、そして現在

トレイルブレイザーは、その登場から数年が経過して目新しさが薄れたことや、システム保守・維持にかかるコストの問題から、1964年に運行を終了しました。その役割は、新たに導入されたスイス・スカイ・ライドに引き継がれることになります。役目を終えた軌道は解体されましたが、モノレール車両は当初、ヒューストンのグッデル・モノレール博物館へ移送され保存される予定でした。

しかし、この計画は実行されなかったようで、数年後には引き揚げ作業場のような場所で発見されるという意外な展開を迎えます。その後、この車両は個人によって購入され、テキサス州ウィルズ・ポイントの町へ運ばれました。そこで住宅としてユニークな形に改装され、現在に至るまでウィルズ・ポイントに存在し、その歴史を静かに語り継いでいます。

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