トレオニン

トレオニン：必須アミノ酸の働きと代謝

トレオニンは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つであり、必須アミノ酸に分類されます。これは、ヒトの体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があることを意味します。側鎖にヒドロキシエチル基を持つことから、極性無電荷側鎖アミノ酸に分類され、その構造は糖であるトレオースと類似しています。そのため、時にスレオニンと表記されることもあります。略号はThrまたはTです。

トレオニンの性質と機能

トレオニンは、様々な生化学反応に関与しています。その側鎖のヒドロキシ基は、グリコシル化という反応によって糖鎖を形成することができます。また、トレオニンキナーゼという酵素によってリン酸化され、ホスホトレオニンという修飾型になります。このリン酸化は、タンパク質の活性や機能を調節する重要な役割を果たします。

トレオニンは、穀物、カッテージチーズ、鶏肉、魚、肉、レンズ豆など、様々な食品に含まれています。しかし、穀物中のトレオニンは消化吸収率が低いことが知られています。

トレオニンの生合成

ヒトはトレオニンを体内で合成できませんが、植物や多くの微生物は、アスパラギン酸を原料としてトレオニンを合成することができます。合成経路は複数段階からなり、アスパルトキナーゼ、β-アスパルテートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ホモセリンデヒドロゲナーゼ、ホモセリンキナーゼ、トレオニンシンターゼといった酵素が関与します。まず、アスパラギン酸がリン酸化され、その後還元、変換を経て、最終的にトレオニンが生成されます。この過程で、β-アスパルテートセミアルデヒドという中間体が生成しますが、これはメチオニンやリシンの生合成にも重要な役割を果たします。

トレオニンの代謝

トレオニンは、主に2つの経路で代謝されます。一つは、トレオニンデヒドロゲナーゼによってピルビン酸に変換される経路です。この経路では、中間体がCoAによる加チオール分解を受け、アセチルCoAとグリシンが生成されます。もう一つの経路は、セリンデヒドラターゼによってα-ケト酪酸に変換される経路です。α-ケト酪酸は、その後スクシニルCoAへと代謝されます。この経路は、ヒトにおいてはあまり一般的ではありません。

トレオニンの発見と命名

トレオニンは、1935年にウィリアム・カミング・ローズ、リチャード・マッコイ、カーティス・マイヤーによって発見されました。これは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の中で最後に発見されたものです。その構造がトレオースと類似していることから、「トレオニン」と命名されました。

トレオニン代謝異常と関連疾患

トレオニンの代謝が障害されると、いくつかの代謝性疾患を引き起こす可能性があります。これらには、マロン酸およびメチルマロン酸尿合併症（CMAMMA）、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症などが含まれます。これらの疾患では、トレオニンの分解に関わる酵素の欠損などが原因で、代謝中間体が体内に蓄積し、様々な症状を引き起こします。

まとめ

トレオニンは、タンパク質合成に必須であり、様々な生化学反応に関与する重要なアミノ酸です。その生合成、代謝、そして関連する代謝異常について理解することは、健康維持や疾患の治療において重要です。

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