トレビュシェット

トレビュシェット（Trébuchet）

トレビュシェットは、中世の攻城戦で活躍した投石機の一種であり、平衡錘投石機とも呼ばれます。他の投擲兵器とは異なり、ロープのねじれや動物の腱の弾力ではなく、重石（カウンターウェイト）の重量を利用して投石を行います。

構造と原理

トレビュシェットは、支柱とアーム、そして重石となるカウンターウェイトで構成されています。アームの一方の端に投射物を載せ、もう一方の端に重石を取り付けます。重石を落下させることでアームが回転し、投射物を遠方へ射出する仕組みです。重石の重量を増やすほど、投射物の威力と射程距離が増大します。

カウンターウェイトを用いた投石機は12世紀頃に発明され、火砲が登場するまで攻城兵器として重用されました。

歴史

アームを利用した投石機は、紀元前4世紀頃の中国で発明されたマンゴネルが原型とされています。これは、アームにかけたロープを人力で引いて投擲するもので、三国時代の中国では「霹靂車」と呼ばれていました。ただし、射程や弾道の調整には熟練が必要でした。

13世紀、元軍が南宋の襄陽を包囲した際、ペルシアから来た技術者によってカウンターウェイト式のトレビュシェットが導入されました。これは襄陽砲または回回砲と呼ばれ、従来の霹靂車を上回る投射能力を発揮しました。霹靂車の石弾の投射能力が48キログラムだったのに対し、襄陽砲は89キログラムの石弾を投射することができました。

トレビュシェットは、カウンターウェイトの重量を調整することで射撃距離を調整でき、比較的精度も高かったとされています。最大のものは、140キログラムの石を最大300メートルも飛ばすことが可能でした。また、石だけでなく、攻城戦における戦術として、伝染病を蔓延させるために人や動物の死骸を投射することもありました。

アルキメデスが発明したという伝説も存在しますが、これは彼がテコの原理を発見したことや、シラクサ防衛戦でローマ軍を新兵器で撃退したという逸話に基づくもので、信憑性は低いと考えられています。最古の記録としては、1165年の東ローマ帝国の記録があります。また、1097年のニカイア包囲戦で使用された投擲機が、初期のトレビュシェットである可能性も指摘されています。

当時の呼称は時代や地域によって異なっていましたが、現代では機構の違いから、人力でロープを引くマンゴネルを「牽引式トレビュシェット」、カウンターウェイトを利用するものを「カウンターウェイトトレビュシェット」と区別しています。

現代での利用

2024年6月には、イスラエル軍がレバノン国境において、接近する戦闘員を発見するために、トレビュシェットを使って低木を焼くという事例が報告されています。

関連項目

カタパルト (投石機)
マンゴネル
攻城戦

外部リンク

Catapult Kits

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