トロギル

トロギル：歴史と文化が息づくアドリア海の宝石

トロギルは、クロアチアのスプリト＝ダルマチア郡に位置する魅力的な港町です。本土とチオヴォ島に挟まれた小さな島に広がる旧市街は、その豊かな歴史と美しい景観から、1997年にユネスコ世界遺産に登録されました。スプリトからわずか27キロ西に位置し、アドリア海の温暖な気候と美しい自然に恵まれています。

悠久の歴史

トロギルの歴史は古く、紀元前3世紀にギリシャ人によって植民都市トラグリオンとして建設されたことに始まります。古代ローマ時代には重要な港として発展しましたが、近隣のサロナの繁栄により、その地位は一時低下しました。しかし、スラヴ人の移住とともにサロナが破壊されると、その住民がトロギルに避難し、新たな活気を取り戻しました。9世紀以降はクロアチア王国に臣従し、11世紀には司教区が創設されました。1107年にはハンガリー王カールマーンによって自治権を授けられ、都市としての地位を確立しました。

12世紀にはサラセン人による侵略で大きな被害を受けましたが、すぐに復興し、12世紀から13世紀にかけて経済的な繁栄を謳歌しました。1242年には、モンゴル帝国の侵攻から逃れたハンガリー王ベーラ4世がトロギルに避難するなど、歴史の重要な舞台ともなりました。13世紀から14世紀にかけては、シュビッチ家がトロギルの領主として影響力を持ちました。ムラデン3世は「クロアチア人の盾」と呼ばれ、その功績はトロギル聖堂内の墓碑銘に刻まれています。

1420年からはヴェネツィア共和国の支配下に入り、1797年のヴェネツィア崩壊後はハプスブルク帝国の支配を受けました。ナポレオン戦争中にはフランス軍に占領された時期もありましたが、1918年まではハプスブルク帝国の支配が続きました。第一次世界大戦後、トロギルはクロアチアとともにスロベニア人・クロアチア人・セルビア人国の一部となり、その後ユーゴスラビア王国の一部となりました。第二次世界大戦中はイタリアに占領されましたが、1944年に解放され、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国を経て、1991年に独立したクロアチアの一部となりました。

世界遺産としての価値

トロギルは、2300年にわたる都市の歴史の中で、古代ギリシャ、古代ローマ、ヴェネツィア共和国など、様々な文化の影響を受けてきました。その結果、宮殿、教会、塔、要塞など、多様な建築様式が混在する独特の都市景観が形成されました。

トロギルの歴史地区は、中世の面影を色濃く残しており、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックなど、様々な時代の建造物が保存されています。特に、13世紀に建てられた聖ラウレンティウス教会は、クロアチア人建築家ラドヴァンによる傑作「ラドヴァンの門」で知られています。この門は、クロアチアにおけるロマネスク＝ゴシック様式の代表的な作品として評価されています。

その他にも、13世紀からの多くの建物、10の教会群、17世紀の城門、15世紀の城壁、カマルレンゴ要塞、領主宮殿、ツィピコの大小邸宅群、ロッジアなど、見どころが満載です。

登録基準

トロギルの世界遺産としての登録は、以下の基準に基づいています。

(2): ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(4): 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。

経済と観光

トロギル周辺の経済は、観光業が大きな役割を果たしており、自治体予算の50％を支えています。ホテルや民宿などの宿泊施設は、合計2万以上のベッドを提供しています。また、周辺地域では伝統的に漁業や農業も行われています。

造船業も重要な産業であり、20世紀初頭に設立されたトロギル造船所では、55,000トンの船を2隻同時に建造することができます。1990年から2004年の間には、93隻の船がこの造船所で建造されました。

交通

トロギルはスプリト空港から6キロと近く、空港と市の間は定期バスで結ばれています。将来的には、スプリト郊外鉄道が空港とトロギルまで延長される予定です。

まとめ

トロギルは、その美しい景観と豊かな歴史、文化が調和した魅力的な都市です。アドリア海沿岸を訪れる際には、ぜひトロギルに足を運び、その魅力を体感してみてください。聖ロブロ大聖堂などの歴史的建造物や、ミラ・ショーンの故郷としても知られています。トロギルは、訪れる人々を魅了し続ける、アドリア海の宝石です。

外部リンク
Historic City of Trogir - UNESCO世界遺産
クロアチア国家観光局 - トロギル
* トロギル自治体公式サイト

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