トロトゥーラ

トロトゥーラ・デ・ルッジエーロ：中世医学における女性の知

トロトゥーラ（またはトロタ、トロクタ）は、11世紀のサレルノ医学校で活躍したとされる女性医師であり、『女性の病気』（De passionibus mulierum curandarum, Trotula Major）の著者として知られています。この書物は、妊娠、出産、産褥、新生児の介護と食餌など、女性特有の健康問題に関する貴重な情報を提供し、15世紀まで教科書として広く用いられました。

生涯と業績をめぐる議論

トロトゥーラの生涯については、彼女が実際に『女性の病気』などの著作を執筆したのか、また女性医師として活動したのかについて、議論があります。しかし、彼女に関する伝承は以下の通りです。

出自： サレルノの貴族、デ・ルッジエーロ家に生まれました。デ・ルッジエーロ家はサレルノ大聖堂の建設に多額の寄付をしたことで知られています。
教育： 貴族の出身であったため、高等教育を受け、医者として働くことができました。
時代背景： 彼女が活躍した時代は、サレルノのロンバルド公国の末期であり、サレルノ医学校が黄金期を迎える前の時代でした。コンスタンティヌス・アフリカヌスがサレルノ医学校で教育を行う以前の時代です。
家族： 代々医師を家業とするジョヴァンニ・プラテアリオと結婚し、二人の息子をもうけました。

著作

トロトゥーラの著作として伝えられているのは、以下の3冊です。

『女性の病気』（De passionibus mulierum ante in et post partum）：妊娠、出産、産褥期の女性の病気について。
『女性の化粧』（De ornatu mulierum）：女性のための美容に関する書物。
* 『治療法、トロトゥーラの第2の書』（Pratica secundum Trocta）：具体的な治療法について。

後世への影響

トロトゥーラの存在は、13世紀の詩人リュトブーフの『薬草のディ』や、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』にも言及されており、彼女が後世の文学作品にも影響を与えたことがわかります。中世医学において、女性の視点から健康問題を考察し、知識を共有したトロトゥーラの功績は、医学史において重要な意味を持っています。

トロトゥーラの研究は、中世における女性の役割や医学の発展を理解する上で、重要な手がかりとなります。

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