トロペオグナトゥス

トロペオグナトゥス (Tropeognathus) の概要

トロペオグナトゥスは、南アメリカの下部白亜系から知られる大型翼竜の一種です。この属は、オルニトケイルス科あるいはアンハングエラ科に属し、その吻部に特異な竜骨状突起を持っていることで知られています。また、この属には唯一の種としてTropeognathus mesembrinusが存在し、かつては別の種と見なされていたTropeognathus robustusは現在ではアンハングエラ属に分類されると考えられています。

発見と命名

1980年代、ドイツのミュンヘンにあるバイエルン国立古生物学地質学博物館が、ブラジルの化石商からアラリペ台地で発見された翼竜の頭骨化石を購入しました。この化石は1987年にペーター・ヴェルンホファーによってTropeognathus mesembrinusとして記載され、属名はギリシャ語の「竜骨」と「顎」に由来しています。さらに、種名のmesembrinosは南半球で発見されたことを反映して「正午の」「南の」を意味します。

この模式標本は、サンタナ累層のロムアルド部層から発見され、アプチアン期からアルビアン期にかけてのものであると推定されています。標本は頭蓋骨と下顎骨から構成されており、他にも複数の標本が報告されていますが、それぞれ異なる分類の議論を引き起こしています。

記載内容

Tropeognathus mesembrinusのサイズは、特に標本の一つであるMN 6594-Vから推定されています。この標本から、翼開長は約8.2mに達したと考えられています。この種の最も目立った特徴は、吻部と下顎の下部に見られる独特の「竜骨状の」隆起です。上顎の隆起は吻端から始まり、頭蓋骨に開いた鼻前眼窩窓まで続いています。この他にも下顎骨部分には小さな隆起が見られます。

胴椎に関しては、12個の椎骨が存在し、第1から第5の椎骨は癒合して背心骨を形成しています。また、仙椎も癒合し複合仙骨を形成し、腸骨とも接続しています。特に第3・第4仙椎には他の翼竜では観察されない特殊な竜骨状突起が見られ、注目を集めています。

分類とその混乱

トロペオグナトゥスの分類は一貫しておらず、研究者によって異なる見解が示されています。ヴェルンホファーは1987年にこの属をトロペオグナトゥス科としましたが、他の学者たちはTropeognathus mesembrinusをアンハングエラ科やオルニトケイルス科に分類することが多いです。これは、この種の特徴が他の翼竜と類似しているため、今なお分類上の混乱が続いています。

大衆文化における存在

トロペオグナトゥスは、BBCの人気テレビ番組『Walking with Dinosaurs』にも登場し、一部のエピソードでは主役として扱われました。しかし、その際にはオルニトケイルス属の一種として扱われ、Ornithocheirus mesembrinusという名称で登場しました。番組内ではその規模がおおむね誇張され、翼開長が12mに達する最大級の翼竜として描かれましたが、文献によると実際の最大は約8mとされています。

結論

トロペオグナトゥスは、そのユニークな形態と複雑な分類により研究者たちの興味を引き続けている存在です。この種は、白亜紀の南アメリカの生態系において重要な役割を果たしていたことが示唆されており、今後の研究によってさらに多くの情報が明らかになることが期待されています。

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