トロ・ロッソ STR8

トロ・ロッソ STR8：2013年シーズンを戦った戦闘マシン

2013年のF1世界選手権で、スクーデリア・トロ・ロッソチームが使用したフォーミュラ1マシン、トロ・ロッソSTR8。このマシンは、チームの技術部門における大きな転換期を経て誕生しました。

開発の転換点

STR8の開発においては、技術部門のリーダーシップが大きく変化しました。2012年シーズンまでテクニカルディレクターを務めていたジョルジオ・アスカネッリから、元ザウバーのジェームス・キーへとバトンタッチされたのです。しかし、キーの加入はシーズン後半だったため、STR8の開発の中心は、2011年からチームに加わっていたルカ・フルバット（チーフデザイナー）が担いました。フルバットは、STR8の設計において、前マシンSTR7で課題となっていたセッティングの幅の狭さを克服することに注力しました。

STR7からの進化：ダブルフロアの廃止と空力

STR8における最も大きな変更点は、前マシンSTR7で採用されていた「ダブルフロア」の廃止です。ダブルフロアとは、サイドポッド下面に隙間を設けた空力デバイスでしたが、キーはザウバーでの経験から、その効果に疑問を抱いていました。彼は、「明らかな向上にはつながっていなかった」と述べており、STR8では一般的なサイドポッド形状へと回帰しました。この変更は、空力特性の改善だけでなく、重量配分の最適化にも貢献しました。

初期の開発段階では、サスペンションパッケージなどのメカニカルな部分の改良に重点が置かれ、シーズン中は空力面での更なるアップデートが計画されていました。これにより、マシンセッティングの幅を広げ、様々なサーキット状況に対応できる柔軟性を高める狙いがありました。

STR8のスペック：フェラーリエンジンと洗練された技術

STR8は、心臓部にフェラーリ製のティーポ056 V8エンジンを搭載。シャシーは軽量かつ高剛性のコンポジットモノコック構造を採用し、ボディーワークにはカーボンファイバーコンポジットが用いられました。

サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式で、トーションバースプリング、アンチロールバー、マルチマチック製ダンパーを組み合わせた高度なシステムが採用されています。ブレーキシステムはブレンボ製キャリパーとパッド、ディスクを採用。ギアボックスは油圧式7速、クラッチはザックス製のトリプルプレート・プルタイプが使用されています。

その他、冷却システム、コックピット機器、ステアリングホイール、ドライバーズシート、消火器システムなどは、スクーデリア・トロ・ロッソが独自に開発した、あるいは厳選した部品が使用されています。ホイールはアップテック製、燃料タンクはATL製といった具合に、各パーツは信頼性の高いサプライヤーから供給されています。マシンの総重量は、ドライバーとカメラを含めて642kgでした。

まとめ：改良と進化を遂げたSTR8

トロ・ロッソSTR8は、チームの技術陣による綿密な開発と、信頼できるサプライヤーとの連携によって生み出された、進化したフォーミュラ1マシンでした。ダブルフロアの廃止や空力、サスペンションの改良、重量配分の最適化など、様々な技術的工夫が凝らされています。これらの改良は、STR7での課題克服と、さらなるパフォーマンス向上を目指したものでした。STR8は、その後のトロ・ロッソの開発に大きな影響を与えた重要なモデルと言えるでしょう。

もう一度検索