トータス重突撃戦車

トータス重突撃戦車：要塞を砕く鉄塊

第二次世界大戦中、イギリス軍はヨーロッパ大陸における激戦を予測し、強固な防御陣地を突破できる新型戦車の開発に着手しました。その結果生まれたのが、トータス重突撃戦車です。本車は、機動性よりも防御力を重視した、いわば移動要塞ともいえる存在でした。

開発の経緯

1943年初頭、連合軍はジークフリート線のような堅固な防御陣地を突破する必要性を認識していました。この課題に対応するため、既存戦車の改良や新規設計案が複数検討されました。クロムウェル巡航戦車やバレンタイン歩兵戦車をベースとした試作車も存在しましたが、最終的には新たな設計案が採用されることになります。

1943年4月、陸軍大臣と軍需省は共同で突撃戦車の開発契約を締結。この契約では、強固な防御地帯での運用を目的とした特殊な戦車であることが明記され、第79機甲師団といった精鋭部隊への配備が想定されていました。

ナッフィールド・オーガニゼーションは、1943年5月から1944年2月にかけて、18種類もの設計案（AT1～AT18）を提出。各案は、防御力と重量を増した進化型の設計となっていきました。最終的にAT16が選定され、25両の試作研究を経ない直接生産が承認されました。しかし、終戦により生産数はわずか6両に削減されました。ドイツへの輸送試験では、その高い信頼性と強力な主砲が実証されましたが、80トンという巨体と3メートルの車高による輸送の困難さも明らかになりました。

特徴と性能

トータスは、一般的な戦車とは異なり、旋回砲塔を持たない固定式戦闘室を備えています。これは、自走砲やドイツの駆逐戦車に近い構造と言えるでしょう。乗員は車長1名、操縦手1名、砲手1名、32ポンド砲装填手2名、機関銃手2名という構成でした。

車体は3つの区画に分割され、前部に操向変速装置、中央部に戦闘室、後部にロールスロイス・ミーティアエンジンを搭載。サスペンションは、4組のボギー（各ボギーは2つの転輪で構成）とトーションバーから成り、優れた走行性能を実現しました。特筆すべきは、逆回転機能を持つメリット・ブラウン操向変速装置で、前進とほぼ同等の速度で後退することが可能でした。

兵装

主砲は、3.7インチ高射砲を改良したQF 32ポンド砲。装薬分離式弾薬を使用し、14.5kgの被帽徹甲弾を発射しました。射撃試験では、1000ヤード（約914m）の距離からパンター戦車の正面装甲を貫通する威力を示しました。

主砲は、大型の球形砲架に搭載され、255mmの装甲で防御されていました。補助兵装として、車体左側にBesa機関銃、天井部にもBesa機関銃2挺を搭載していました。

現状と登場作品

6両製造されたトータスのうち、1両がイギリスのボービントン戦車博物館に現存し、稼働状態が維持されています。

また、トータスは様々なゲーム作品にも登場しています。『World of Tanks』や『War Thunder』、『トータル・タンク・シミュレーター』など、多くのゲームでイギリス軍の重戦車、または駆逐戦車としてプレイ可能です。ゲーム内では、AT 2からAT 16（トータス）へと繋がる開発ツリーが再現されている場合もあります。

参考文献

Foss, Christopher F. (2002). The Encyclopedia of Tanks and Armored Fighting Vehicles. Spellmount. ISBN 1862271887
Chamberlain, Peter; Chris Ellis (2000). British and American Tanks of World War Two. Cassell. ISBN 0304355291
Chamberlain, Peter; Chris Ellis (2002). Tanks of the World 1915-1945. Cassell Military. ISBN 0304361410
Forty, George (2006). The Illustrated Guide to Tanks of the World. Hermes House. ISBN 0681459050

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