トート・タロット

トート・タロット（Thoth Tarot）

トート・タロットは、イギリスの著名なオカルティストであるアレイスター・クロウリーがデザインし、女流画家フリーダ・ハリスがその絵を描いた特異なタロットカードセットです。このタロットは、高度な象徴性と精緻なアートワークが特徴であり、タロット愛好家やオカルティストたちから非常に高く評価されています。

歴史

トート・タロットの制作は、1938年にフリーダ・ハリスのリクエストによって始まりました。当初は数ヶ月で完成する予定でしたが、最終的にはおよそ5年がかりでの完成となります。1944年、クロウリーはタロット解説書『トートの書』の挿絵としてその内容を初めて公表しました。しかし、カード形式での出版は長い間実現せず、クロウリーが亡くなってから22年後の1969年にようやく友人の手によってカードが完成しました。

トート・タロットは、サイズがやや大判であり、複雑で象徴的な絵柄が多いのが特徴的です。このことから、タロットファンの間でもユニークな存在となっています。ただし、クロウリーの死後からの出版であるため、実際に彼が選んだ図柄が使われているかどうかは不明です。近年では、特定のカードが複数枚含まれているセットも販売されています。

他のタロットとの相違点

トート・タロットは、ウェイト版タロットと同様に黄金の夜明け団の教義を基にしているものの、クロウリー独自の解釈が加えられ、いくつかの相違点が見られます。一例として、大アルカナや小アルカナのカード名称が変更されている点が挙げられます。例えば、

• - 『魔術師（The Magician）』が『魔術師（The Magus）』
• - 『女司祭長（The High Priestess）』が『女司祭（The Priestess）』
• - 『正義（Justice）』が『調整（Adjustment）』
• - 『運命の輪（Wheel of Fortune）』が『運命（Fortune）』
• - 『力（Strength）』が『欲望（Lust）』

小アルカナのカードも、一般的な構成とは異なり、『王（King）』『女王（Queen）』『騎士（Knight）』『小姓（Page）』に代わって、『王子（Prince）』『王女（Princess）』と名付けられています。また、『獣の印』と呼ばれる特異なカードも含まれる版が存在します。

トート・タロットのヘブライ文字の配列も、黄金の夜明け団系タロットのものと異なり、マルセイユ版に準じた形にアレンジされています。このように、クロウリーの手による創造的なアプローチが随所に見受けられるのが特徴です。

カードの概説

トート・タロットでは、大アルカナは『アテュ』、小アルカナは『スモール・カード』と呼ばれています。また、人物札についても『コート・カード』と称し、一般的なタロットとの用語に相違が見られます。

アテュ（大アルカナ一覧）

• - 0 『愚者（The Fool）』
• - I 『魔術師（The Magus）』
• - II 『女司祭（The Priestess）』
• - III 『女帝（The Empress）』
• - IV 『皇帝（The Emperor）』
• - V 『神官（The Hierophant）』
• - VI 『恋人（The Lovers）』
• - VII 『戦車（The Chariot）』
• - VIII 『調整（Adjustment）』
• - IX 『隠者（The Hermit）』
• - X 『運命（Fortune）』
• - XI 『欲望（Lust）』
• - XII 『吊られた男（The Hanged Man）』
• - XIII 『死神（Death）』
• - XIV 『技（Art）』
• - XV 『悪魔（The Devil）』
• - XVI 『塔（The Tower）』
• - XVII 『星（The Star）』
• - XVIII 『月（The Moon）』
• - XIX 『太陽（The Sun）』
• - XX 『永劫（The Æon）』
• - XXI 『宇宙（The Universe）』

このように、トート・タロットは通常のタロットとは異なる独創性に満ちたカードであり、知識・技術を持つ者にとっては特別な意味がある存在となっています。

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