トーマス・クック・グループ

トーマス・クック・グループ：近代旅行のパイオニアの興亡

トーマス・クック・グループは、19世紀にトーマス・クックによって設立された、世界初の近代的な旅行会社として知られています。団体旅行の先駆けとして、多くの人々に旅行の機会を提供し、旅行業界に大きな影響を与えました。しかし、2019年に経営破綻し、その歴史に幕を閉じました。ここでは、トーマス・クック・グループの歴史、経営破綻の原因、そして再建について詳しく解説します。

歴史

トーマス・クックは、1841年に禁酒運動の参加者を運ぶために、鉄道会社と交渉して団体割引を実現しました。これが、団体旅行の始まりと言われています。その後、一般向けの団体旅行を企画・販売するようになり、1855年からはヨーロッパ諸国への旅行も手掛けるようになりました。

1872年には、世界一周団体旅行を実現し、旅行業界に大きなインパクトを与えました。また、1873年には『トーマスクック・ヨーロッパ鉄道時刻表』を発刊し、ヨーロッパの鉄道旅行に欠かせない情報源となりました。1874年には、トラベラーズチェックの取り扱いを開始し、旅行者の安全な資金管理をサポートしました。

20世紀に入ると、トーマス・クックは所有権の変遷を経て、1992年にはドイツのランデス銀行の傘下となりました。その後、買収や合併を繰り返し、2007年にはマイトラベル・グループを吸収合併し、「トーマス・クック・グループ」として再編されました。

経営破綻

2010年代に入ると、トーマス・クック・グループは経営不振に陥りました。その原因は、オンライン予約の普及による競争激化、ヨーロッパの熱波やブレグジットによる海外旅行需要の減少などが挙げられます。

2019年8月には、中国の復星国際グループからの支援を受けることで合意しましたが、その後、追加の資金が必要となり、再建を断念しました。そして、2019年9月23日、ロンドンの裁判所に破産申請を行い、178年の歴史に幕を閉じました。

経営破綻時、トーマス・クックのツアーで旅行中の15万人以上の帰国支援のため、イギリス政府は「マッターホルン作戦」と呼ばれる大規模な帰国作戦を実施しました。

再建

2019年11月、復星国際は「トーマス・クック」の商標権を取得し、2020年7月には中国で新法人を設立し、営業を再開しました。同年9月には、イギリスでもオンライン旅行会社として営業を再開し、再び旅行業界に参入しました。

まとめ

トーマス・クック・グループは、近代旅行のパイオニアとして、旅行業界に多大な貢献をしました。経営破綻という苦難を乗り越え、中国企業によって再建された今、新たなスタートを切っています。その歴史と功績は、今後も旅行業界に語り継がれていくことでしょう。

トーマス・クックが発行していた『トーマスクックヨーロッパ鉄道時刻表』は、鉄道ファンにとって貴重な資料でしたが、2013年に休刊となりました。しかし、その後、新会社が設立され、『ヨーロッパ鉄道時刻表』として復刊し、現在も発行されています。

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