トーマス・ボドキン

トーマス・パトリック・ボドキンについて

トーマス・パトリック・ボドキン（1887年7月21日 – 1961年4月24日）は、アイルランドの多才な人物で、弁護士、美術史家、美術収集家、キュレーターとして知られています。彼は特に「教授」の称号で広く認識されています。ボドキンは、1927年から1935年までアイルランド国立美術館の館長を務め、その後、バーバー美術館の初代館長として、数多くの重要なコレクションの形成に寄与しました。特に、『オブザーバー』紙が「20世紀最後の偉大な美術コレクション」と評価したコレクションの礎を築いたことで知られています。

経歴の始まり

彼はダブリンで、ナショナリストのジャーナリストであり、判事、庶民院議員としても活動したマシアス・マクダネル・ボドキンの長男として生まれました。1908年、ボドキンは王立アイルランド大学を卒業し、弁護士としての仕事を1911年から1916年まで続けました。この時期、彼の叔父であるサー・ヒュー・レインの影響を受けて、美術品の収集を始めることになります。叔父の死後、ボドキンはレインのコレクションをアイルランドに取り戻すための法廷闘争に関与し、これは1957年まで続くことになります。

美術館での活動

1916年、ボドキンは法曹界から離れ、アイルランド国立美術館の理事に就任しました。1927年には館長に任命され、美術館の発展に力を注ぎました。また、1926年には新しいアイルランド共和国の硬貨のデザインを決定する委員会において重要な役割を果たしました。

1935年、ボドキンはアイルランドを離れ、バーミンガム大学の新設されたバーバー美術館の初代館長として着任しました。ボドキンが館長に就任した当初、バーバー美術館のコレクションはわずか7点でしたが、彼の努力により1939年までに著名な作品が多数収集されました。これには、ティントレットの『若い紳士の肖像』や、ホイッスラーの『白のシンフォニー第3番』などが含まれ、ボドキンは美術市場が困難な時期にもかかわらず、数多くの例外的な作品を購入することに成功しました。

アイルランドへの貢献

彼は1952年に引退しましたが、それまで新たな作品の購入に強い影響力を持ち続け、後任の館長も彼の業績を高く評価しました。また、ボドキンはアイルランドの美術振興においても重要な役割を果たし、1949年には当時の首相の求めに応じてアイルランドの美術についての報告書を作成しました。さらに、1951年にアーツ・カウンシルが設立されるきっかけとなったのも、彼の活動の一環です。

メディア活動と晩年

ボドキンは放送に積極的に出演し、様々な著作や回顧録を出版しました。特に、1927年に刊行された著書『The Approach to Painting』は、一般読者向けの美術入門書として長い間人気を博しました。晩年には、BBCのテレビ番組『Animal, Vegetable, Mineral?』に出演し、様々な物の正体を探る魅力的な企画にも参加しました。

カトリック信者であったボドキンは、教会への奉仕活動が高く評価され、ローマ教皇庁から大聖グレゴリウス勲章を授与されました。彼の胸像が王立美術院に展示されたこともあり、ボドキンの死後、その胸像は友人である彫刻家サー・チャールズ・ウィーラーによりバーバー美術館に寄贈されました。ボドキンはダブリンのグラスネヴィン・セメタリーに埋葬されています。

最後に、1960年には『This Is Your Life』という人気テレビ番組で取り上げられ、その名声は最後まで色褪せることはありませんでした。ボドキンの業績は、美術界だけでなく、アイルランドの文化全体に深い影響を与え続けています。

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