トーマス野口

トーマス・ツネトミ・野口の歩み

トーマス・ツネトミ・野口（Thomas Tsunetomi Noguchi）は、1927年1月4日に福岡県で生まれ、神奈川県横須賀市で育ちました。父親は耳鼻咽喉科の医師として開業しており、彼の医療に対する関心の背景となりました。1944年、旧制神奈川県立横須賀中学校を卒業し、同級生にはノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊がいました。

医師としてのキャリアを追求するため、野口は日本医科大学医学部を卒業後、1952年にアメリカに渡ります。ローマ・リンダ大学で臨床・解剖病理学を学び、そこで助教授として活躍しました。1961年からはロサンゼルス郡検死局に勤務し、1967年には局長に就任しました。

野口が世間の注目を集めるきっかけとなったのは、1962年に行ったマリリン・モンローの検死です。この3時間に及ぶ解剖は、彼を法医学の新たな分野の開拓者として知らしめました。その後、多くの著名人の検死を担当し、シャロン・テート、ウィリアム・ホールデン、ナタリー・ウッド、ジョン・ベルーシといった映画スターの事例から、ジョン・F・ケネディ大統領やロバート・ケネディ上院議員の検死に至るまで、多岐にわたります。

特にロバート・ケネディに関する検死では、暗殺当時の状況を再現するために、彼の衣服を着せたまま遺体を持ち上げるという慎重な手法が取られました。このような緻密な調査は、マスコミにも大きく取り上げられ、法医学という分野への関心を広げるきっかけとなりました。1976年には、彼をモデルにしたテレビドラマ『Dr.刑事クインシー』が放送され、法医学の理解が一般に普及することとなりました。

1981年には、30年近くの年月を経て日本に帰国し、TBSの番組『モーニングジャンボ奥さま8時半です』に登場しました。しかし、1982年にウィリアム・ホールデンの検死に問題が生じたことで、彼はバッシングを受け、ロサンゼルス検死局の局長職を辞任することとなります。

その後、南カリフォルニア大学医学部で教授として教育にあたったほか、USCメディカルセンターで医療活動を展開しました。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）でも教授職に就き、後進の育成に力を注ぎました。1999年には、長年の業績が認められ瑞宝章を受章し、同年に引退を果たしました。

著作物

野口はまた、著書を通じてその経験を伝えています。代表作には『検死官 Dr.刑事トーマス野口』や『検死捜査 LA検死局長の事件ファイル』があります。

彼の名が広まった背景には、法医学という職業の重要性を人々に示したことが大きいでしょう。トーマス・ツネトミ・野口は、検死に対する厳密なアプローチを持ち続け、法医学の発展に大きく寄与した医師として記憶されています。

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