トーマト

『トーマト』（Tormato）は、1978年に発表されたイエスの9作目のスタジオ・アルバムです。プログレッシブ・ロックの先駆者である彼らが、新たな音楽性を追求した意欲作として知られています。

アルバムの背景

前作『究極』に続く本作は、メンバーそれぞれの個性がぶつかり合い、実験的なサウンドが特徴です。ジョン・アンダーソン（ボーカル）、スティーブ・ハウ（ギター）、クリス・スクワイア（ベース）、アラン・ホワイト（ドラムス）、リック・ウェイクマン（キーボード）という不動のメンバー構成で制作されました。

楽曲について

アルバムには、多様な楽曲が収録されています。

輝く明日 (Future Times): スピーディーな展開と複雑なアンサンブルが印象的なオープニング・ナンバーです。
歓喜 (Rejoice): ジョン・アンダーソンのボーカルが際立つ、壮大なバラード。
クジラに愛を (Don't Kill The Whale): ポップなメロディと環境問題をテーマにした歌詞が特徴的なシングル曲。
マドリガル (Madrigal): リック・ウェイクマンのキーボードが美しい、クラシカルな雰囲気の小品。
自由の解放 (Release, Release): アラン・ホワイトのドラムが力強い、ハードなロック・ナンバー。
UFOの到来 (Arriving UFO): スティーブ・ハウのギターが独特な世界観を醸し出すインストゥルメンタル曲。
天国のサーカス (Circus Of Heaven): ジョン・アンダーソンの息子ダミアンの声がフィーチャーされた、実験的な楽曲。
オンワード (Onward): クリス・スクワイアがオーケストラを起用した、荘厳なバラード。
自由の翼 (On The Silent Wings Of Freedom): ダイナミックな展開と美しいメロディが融合した、アルバムのハイライト。

アルバム・タイトルとジャケット

当初、アルバム・タイトルはスティーブ・ハウが提案した「Tor」になる予定でした。Yes Torという露頭の白黒写真をジャケットに使用する案もありましたが、マネージャーの秘書が写真を見て「潰れたトマト」を連想したことから、造語の「Tormato」に変更されました。ジャケットは、前作に続いてヒプノシスが担当し、Yes Torの写真にトマトがぶつけられたデザインとなりました。

リック・ウェイクマンとバイロトロン

リック・ウェイクマンは、本作でメロトロンを改良したキーボード「バイロトロン」を使用しています。彼は、アメリカ人デヴィッド・バイロが開発したバイロトロンの開発に資金提供も行いました。

リマスター盤

2004年には、リマスター盤が発売され、音質が向上しました。また、「Abilene」や「Money」など、10曲のボーナス・トラックが追加収録されています。

評価と影響

『トーマト』は、発表当時、その実験的な音楽性から賛否両論を呼びました。しかし、現在では、イエスの音楽性を語る上で欠かせない作品として再評価されています。

レコーディング・メンバー

ジョン・アンダーソン – ボーカル
スティーヴ・ハウ – ギター、ボーカル
クリス・スクワイア – ベース、ボーカル
アラン・ホワイト – ドラムス、パーカッション
リック・ウェイクマン – キーボード

エピソード

「クジラに愛を」はシングル・カットされ、B面にはアルバム未収録曲の「Abilene」が収録されました。「自由の翼」、「クジラに愛を」、「マドリガル」のプロモーション・ビデオも制作されています。

リック・ウェイクマンは、当時のインタビューで、収録曲のうち4曲を主にアンダーソンと共作したと主張し、各曲の作詞・作曲の記載を信用してはいけないと語っています。

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