トールマン・TG181

トールマン・TG181：F1挑戦の足跡

トールマン・TG181は、1981年と1982年のF1世界選手権に参戦したフォーミュラマシンです。設計を手掛けたのはロリー・バーンで、彼のF1における処女作となりました。このマシンは、前年にブライアン・ヘントンがヨーロッパF2選手権でチャンピオンを獲得したトールマン・TG280をベースに開発されました。アルミ製モノコックシャシーを採用し、エンジンにはハート製の415T直列4気筒ターボエンジンを搭載した点が特徴です。

開発の苦悩：ターボとオーバーヒート

TG181の開発は、多くの困難を伴いました。特に、ハート415Tターボエンジンの熱量管理に苦戦したことが、バーン自身の証言からも明らかです。これはハートにとって初めてのターボエンジン搭載であり、ベンチテストの結果を基にした熱量想定が、F1の実戦における過酷な状況下では不十分であったためです。ターボから発生する熱量は想定を大きく上回り、オーバーヒート問題は常にTG181を悩ませました。

さらに、トールマンチーム、ハート、そしてピレリタイヤといった関係者すべてがF1に参入したばかりであり、他チームとの性能差を正確に把握できていない状況でした。そのため、経験不足によるミスを繰り返しながら、試行錯誤を繰り返してマシン開発を進める必要があったのです。バーンは、予想以上にF1の世界が難しいと痛感したと回想しています。

1981年シーズン：予選突破の壁

TG181は1981年シーズン第4戦サンマリノグランプリから参戦を開始しました。しかし、予選突破の壁に苦戦し、ブライアン・ヘントンとデレック・ワーウィック両ドライバーとも予選通過は1回のみでした。決勝レースでも、ヘントンの10位が最高位となり、ワーウィックはリタイアに終わりました。

1982年シーズン：改良と新たなドライバー

1982年シーズンでは、ヘントンがアロウズに移籍したため、代わりにテオ・ファビが加入し、ワーウィックと共にTG181をドライブしました。このシーズンには、改良型のTG181BとTG181Cが投入され、予選通過率は向上しましたが、ポイントを獲得することはできませんでした。

後年の反省とTG183への活かし方

バーンは後年、TG181での経験が自身の成長に大きく貢献したと語っています。特に、巨大なツインチューブ・モノコックによる冷却系統の制約を痛感し、その反省を後継モデルであるTG183に活かしました。TG183では、マクラーレンやロータスに続く3番目のチームとしてカーボンコンポジットシャシーを採用し、冷却性能の改善に成功しました。

TG181の印象：巡洋艦ベルグラノ

ノーズ上にフロントウィングを備えたTG181の形状は、チーム内では「巡洋艦ヘネラル・ベルグラノ」と呼ばれていました。この愛称からも、当時のチームの奮闘と、マシンへの強い思い入れが感じられます。TG181は、結果こそ残せませんでしたが、F1という世界で戦い抜いた、トールマンチームにとって重要な1台であったと言えるでしょう。その経験は、後のマシン開発やチームの成長に大きく寄与したのです。

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