ドイツ民主農民党

ドイツ民主農民党（DBD）とは

ドイツ民主農民党（Demokratische Bauernpartei Deutschlands, DBD）は、かつて存在した東ドイツ（ドイツ民主共和国）の政党です。第二次世界大戦後、ソ連占領地域において、社会主義統一党（SED）の主導のもと、農村部における影響力拡大を目的に設立されました。DBDは、SEDを補完する衛星政党としての役割を担い、東ドイツの政治体制において一定の地位を占めました。

成立の背景

第二次世界大戦後、ドイツは連合国によって分割占領されました。ソ連占領地域では、ドイツ共産党とドイツ社会民主党が合同し、社会主義統一党（SED）が結成され、政治的な主導権を握りました。しかし、農村部ではドイツキリスト教民主同盟（CDU）が依然として一定の勢力を保っていました。そのため、SEDは農村部における支持基盤を強化する必要があり、DBDの設立を主導しました。

DBDの初代党首には、SED幹部から移籍したエルンスト・ゴールデンバウムが就任しました。彼は34年もの長きにわたり党首を務め、DBDの路線を決定づけました。

衛星政党としての活動

1949年に東ドイツが成立すると、DBDはSEDの指導のもと、形式的な複数政党制の一翼を担いました。SEDによる一党独裁体制下において、DBDはCDU、自由民主党（LDPD）、国民民主党（NDPD）とともに、SED以外の存在を認められた数少ない政党の一つでした。人民議会においては、500議席中52議席がDBDに割り当てられ、閣僚評議会にも常に閣僚を送り込みました。

DBDは、農業の集団農場化を推進し、「社会主義の建設」を掲げました。党員数は1984年には10万人を超え、衛星政党としては一定の勢力を有していました。しかし、DBDはSEDの政策に一度も反対することなく、SEDを支持し続けました。DBDは、SEDの政策を農村部に浸透させるための組織としての役割を果たしました。

ドイツ再統一とDBDの終焉

1989年のベルリンの壁崩壊後、東欧革命の波が東ドイツにも押し寄せました。DBDは、民主化の過程で独自の動きを見せるようになり、ギュンター・マロイダが人民議会議長に選出されました。マロイダは、ハンス・モドロウとともに、体制転換期における重要な役割を果たしました。

1990年3月に行われた人民議会初の自由選挙において、DBDは環境保護を重視する農業政党として再出発を図りました。しかし、西ドイツとの早期統一を掲げるCDUが勝利し、DBDは議席を大幅に減らしました。その後、DBDはCDUに吸収合併され、その歴史に幕を閉じました。

まとめ

ドイツ民主農民党は、東ドイツにおいてSEDの衛星政党として存在し、農業政策の推進や農村部におけるSEDの影響力拡大に貢献しました。しかし、民主化の波の中で独自の道を模索するも、ドイツ再統一の過程でCDUに吸収合併され、消滅しました。DBDは、東ドイツの政治体制における衛星政党の役割を示す、歴史的な存在と言えるでしょう。

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